のどかな雰囲気と全国でも有数の湯量を誇る良質の温泉地として、江戸時代から多くの人に愛されてきた熱海が悲劇に見舞われた。7月3日、市内を流れる逢初川河口から約2kmの地点が起点となる土石流が発生。多くの住宅が流され、尊い命も失われた。
観光地、別荘地、さらに移住先としても人気の熱海は、海を一望できることが魅力だったが、災害に弱いという側面も露呈した今回の災害。国内屈指の観光地であることから、“危険な土地です”とは発信しにくいという背景もあったというが、そういった事情に加え、新たな落とし穴もあった。
「2020年春以降、熱海は不動産バブル。リモートワークによって都心を脱出した移住者が増え、問い合わせが以前の1.5倍にもなった業者もいるほどです。都心に比べれば物件価格も格段に安いので、セカンドハウス的に使っている人も多くいます。ただ、そういった人は住民票を移していませんから行政からも情報を得ていませんし、避難訓練にも参加していない。その結果、土砂災害の危険性を共有できていなかった人も多いと聞きます」(不動産関係者)
山口大学農学部教授で土砂災害を研究する山本晴彦さんは、熱海に限らず、リゾート地への移住は、安易に決めるべきではないと警鐘を鳴らす。
「海や川を見下ろせる土地は、確かに眺めはいいのですが、山を切り開いてつくられた地盤がしっかりしていない土地や傾斜地であることがほとんどです。重機で押し固めて平らな土地にしてありますが、地盤が脆い可能性が高い」