ライフ

消えない「アジア人差別」に私たちはどう応じてゆけばよいのか

フランス代表としてユーロ2020に出場しているグリーズマン(左)とデンベレ(AFP=時事)

フランス代表としてユーロ2020に出場しているグリーズマン(左)とデンベレ(AFP=時事)

「謝ったら死ぬ病」「謝ったら死ぬマン」とSNSで揶揄される人たちがいる。まるで自らの非を認めたら死んでしまうとばかり、絶対に謝らない態度を崩さないのだ。そういう人は実際には少なくないが、いったい私たちはどう対応すれば未来へ進めるのか。スペイン1部バルセロナのフランス代表アントワヌ・グリーズマン(30)とウスマヌ・デンベレ(24)による日本人差別に対し、謝罪にならない弁明しか彼らがしないことについても、どう受け止めるべきなのか。俳人で著作家の日野百草氏が、新型コロナウイルス感染症によって露骨になったアジア人ヘイトに対して、どう対応してゆくべきか訊ね、考えた。

 * * *
「基本的には謝ったら負けの国だからね、文化の違いなんだよ」

 筆者の尊敬する先生、元大学教授は電話口で大笑い、もう70代後半だというのに元気である。かつて太極拳を日課にすれば100歳までは余裕で生きると語っていたが、当時は信じなかった筆者も本気でやろうかと思わされてしまう。先生はパリだけでなくフランス東部、東欧での生活も長かった。

「最初に言っておくけどあくまで一般論だからね。決めつけるな、いい人もいます、なんて言われたらなんにも言えない。当たり前の話だけどね」

 先生は断りを入れるが、40年以上に及ぶヨーロッパ圏での交流と学びから日本人がステレオタイプに憧れる「白人サマ」の裏をよく知っている。スロバキアでは身ぐるみ剥がされ、アルバニアでは死にかけた。冷戦末期を乗り越えて日本文化のために尽くしてこられた。ご高齢だが『新世紀エヴァンゲリオン』が好きで、日本のサブカルチャーもそれなりに知っている。

「サッカーの二人ね、謝ってないよね。謝るわけがないんだ。だって本音だもの。本音ってことは本心なわけで、本音と本心は違うけど通じてるんだ。その本心を裏切ることはできないでしょう。本心は自分、自分は否定してはならない。ということは、謝らない。日本人とは考え方そのものが違うんだ。謝ってもそれは日本人の考える謝りじゃない」

 先生の話は電話口だと本当に難しい。頭が良すぎるのか話も飛びまくるし話の途中に注釈が入りまくる。以降は専門用語を省き、できる限り簡潔かつ平易に改変させていただくが、筆者が聞きたかったのはスペイン1部FCバルセロナ所属のフランス代表、グリーズマンとデンベレの日本人差別発言に関してのことだ。彼らは宿泊先の日本人スタッフに「汚い顔なんか見たくないよ」「なんて言語(日本語)だ」「先進国なのか後進国なのか」(先生による大まかな訳)と嘲笑し、撮影して晒したものである。

関連キーワード

関連記事

トピックス

元皇族の眞子さんが極秘出産していたことが報じられた
《極秘出産の眞子さんと“義母”》小室圭さんの母親・佳代さんには“直接おめでたの連絡” 干渉しない嫁姑関係に関係者は「一番楽なタイプの姑と言えるかも」
NEWSポストセブン
岐阜県を訪問された秋篠宮家の次女・佳子さま(2025年5月20日、撮影/JMPA)
《ご姉妹の“絆”》佳子さまがお召しになった「姉・眞子さんのセットアップ」、シックかつガーリーな装い
NEWSポストセブン
会話をしながら歩く小室さん夫妻(2025年5月)
《極秘出産が判明》小室眞子さんが夫・圭さんと“イタリア製チャイルドシート付ベビーカー”で思い描く「家族3人の新しい暮らし」
NEWSポストセブン
ホームランを放ち、観客席の一角に笑みを見せた大谷翔平(写真/アフロ)
大谷翔平“母の顔にボカシ”騒動 第一子誕生で新たな局面…「真美子さんの教育方針を尊重して“口出し”はしない」絶妙な嫁姑関係
女性セブン
川崎春花
女子ゴルフ“トリプルボギー不倫”で協会が男性キャディにだけ「厳罰」 別の男女トラブル発覚時に“前例”となることが避けられる内容の処分に
NEWSポストセブン
寄り添って歩く小室さん夫妻(2025年5月)
《木漏れ日の親子スリーショット》小室眞子さん出産で圭さんが見せた“パパモード”と、“大容量マザーズバッグ”「夫婦で代わりばんこにベビーカーを押していた」
NEWSポストセブン
六代目体制は20年を迎え、七代目への関心も高まる。写真は「山口組新報」最新号に掲載された司忍組長
《司忍組長の「山口組200年構想」》竹内新若頭による「急速な組織の若返り」と神戸山口組では「自宅差し押さえ」の“踏み絵”【終結宣言の余波】
NEWSポストセブン
第1子を出産した真美子さんと大谷(/時事通信フォト)
《母と2人で異国の子育て》真美子さんを支える「幼少期から大好きだったディズニーソング」…セーラームーン並みにテンションがアガる好きな曲「大谷に“布教”したんじゃ?」
NEWSポストセブン
俳優・北村総一朗さん
《今年90歳の『踊る大捜査線』湾岸署署長》俳優・北村総一朗が語った22歳年下夫人への感謝「人生最大の不幸が戦争体験なら、人生最大の幸せは妻と出会ったこと」
NEWSポストセブン
漫才賞レース『THE SECOND』で躍動(c)フジテレビ
「お、お、おさむちゃんでーす!」漫才ブームから40年超で再爆発「ザ・ぼんち」の凄さ ノンスタ石田「名前を言っただけで笑いを取れる芸人なんて他にどれだけいます?」
週刊ポスト
違法薬物を所持したとして不動産投資会社「レーサム」の創業者で元会長の田中剛容疑者と職業不詳・奥本美穂容疑者(32)が逮捕された(左・Instagramより)
「よだれを垂らして普通の状態ではなかった」レーサム創業者“薬物漬け性パーティー”が露呈した「緊迫の瞬間」〈田中剛容疑者、奥本美穂容疑者、小西木菜容疑者が逮捕〉
NEWSポストセブン
大阪・関西万博で「虫が大量発生」という新たなトラブルが勃発(写真/読者提供)
《万博で「虫」大量発生…正体は》「キャー!」関西万博に響いた若い女性の悲鳴、専門家が解説する「一度羽化したユスリカの早期駆除は現実的でない」
NEWSポストセブン