「睡眠を制御するホルモンのメラトニンの分泌量は、10~20代でピークに達して減り始め、60代以降で大幅に減る。睡眠薬に頼るようになり、やめられなくなる人は多い」。そう語るのは睡眠・呼吸器専門外来のRESM新横浜の白濱龍太郎院長だ。これまで1万人以上の睡眠障害を治療した名医は、睡眠薬をやめるうえでの注意点を指摘する。
「国内で多く処方されているベンゾジアゼピン系睡眠薬は長期服用による依存や、体外に排出されずに日中も頭がぼーっとするなどの問題もあります。かといって急に中断すると不安が強まったり、より強い不眠症状が出る『退薬症候』が現われる可能性もあります」
続けるのもやめるのも怖いが、どうすれば断薬ができるのか。
「順序が大切です。まず不眠になっている因子を問診で把握し、取り除きます。そのうえで、メラトニンの分泌を増やす“睡眠ファースト”の生活習慣を身につけてもらいます」
朝起きる時間を一定にし、朝日を体に浴びながら散歩をする。ブルーライトはメラトニンの働きを妨げるので、就寝前はスマホやテレビ、パソコンなど電子機器を遠ざける。代わりに音楽を聴いたり本を読むようにする。
ただし、「過度に感情移入する小説や、仕事を連想するビジネス書はNG」だという。
こうした毎日の行動はノートに記録しておくと“睡眠ファースト”を意識しやすくなるという。
「それで睡眠が安定したら、薬を減らしていきます。徐々に薬の量を減らす漸減法や、1日置きに服用する隔日法があります。これも医師と相談で決めてください」
※週刊ポスト2021年7月16・23日号