6場所連続休場明けで進退が懸かっていた横綱・白鵬だが、名古屋場所では初日から勝ちっぱなしで中日に給金直しとなった。大関・貴景勝がケガで3日目から休場となるなどして、序盤から綱取りのかかる大関・照ノ富士との「2強」の構図が出来上がっていた。
「白鵬の好き放題の言動に厳しい目を向ける協会側としては、頭が痛い構図でしょう。3月場所で鶴竜が引退して、白鵬が一人横綱となってからは、“休みすぎ批判”が一極集中していたが、照ノ富士が優勝して昇進すれば、東西の横綱が揃い、その状況が和らぐ。協会側もそれを分かっているから、“照ノ富士が準優勝なら昇進を認めるべきではない”といった声があがっていたが、白鵬が優勝したらしたで、また休場を挟んでの延命が可能になってしまいかねない」(協会関係者)
そうしたなか、注目されるのが2人の「本当の仲」だ。
モンゴル出身の先輩・後輩であるのはもちろんだが、2017年に起きた横綱・日馬富士による暴行事件の際には、貴乃花親方(当時)が協会に提出した意見書に、現場にいた白鵬が膝を傷めている照ノ富士に正座を強要していたとの記述があった。その後、膝の状態が悪化した照ノ富士は序二段まで転落している。
「モンゴル出身の力士たちが集まった宴席での事件により、2人の間に距離ができたのは間違いないだろう。その一方で、引退後も協会内での勢力拡大を目指す白鵬にとって、同郷の後輩といつまでも関係が悪いのはプラスにならないから、どこかで手打ちをしていてもおかしくない。白鵬の復活Vに懸ける思いは相当、強いようだが、照ノ富士が昇進すると都合がいいのもたしか。2人がガチンコで潰し合うのか、すでに何らかの手打ちがあったのか、千秋楽結びの一番の相撲の激しさから見えてくるものがあるのではないか」(ベテラン記者)
奇しくも、コロナ対策で報道陣が支度部屋に入れない状況が続くなか、今場所は東横綱の白鵬と東の正大関である照ノ富士が、14日目まで東の支度部屋で並んで座る状況が続く。
隣同士の2人は、何か言葉を交わしているのか、黙したまま千秋楽の決戦を待っているのか。
※週刊ポスト2021年7月30日・8月6日号