7月6日、ヤクルト対阪神(神宮球場)の試合中にベンチから、「やるわけないやろ!」と怒号が響いた。“事件”は5回表の阪神の攻撃中に起きた。二塁走者の近本光司(26)が複数回にわたって左腕を不自然に動かした行為をヤクルトの三塁手・村上宗隆(21)が審判に指摘。“サイン盗み”だとアピールしたのだ。
その指摘に激昂した阪神・矢野燿大監督らが、村上に「ごちゃごちゃ言うな! 絶対やってへんわ、ボケ」などと怒声を浴びせたのだった。
場内は騒然とし、試合は中断。まさに一触即発だったが、ヤクルト・高津臣吾監督と矢野監督が審判団の前で話し合い、その場は収まった。試合後、矢野監督は「俺は現役時代から一回も(不正行為を)やったことがない。そういう野球は一番やりたくない」と潔白を主張した。
ところが4日後の10日、今度はウエスタン・リーグ(二軍)の中日対阪神戦で、再びサイン盗み疑惑が勃発。中日から「阪神の選手が伝達行為を行なった」とアピールがあり、両チームの監督らがホームベース付近で激しい言い合いとなり、審判団から警告を受けた。
首位阪神をめぐりにわかに持ち上がった“サイン盗み騒動”について、虎番記者が語る。
「昨年も、神宮でのヤクルト戦でネクストバッターズサークルにいた近本がバックネット裏の記者席とコンタクトを取ったことが問題になり、審判から注意されていた。今年の阪神は得点圏打率、それも走者二塁の場面でタイムリーが多いことで、他の5球団はみな警戒していました」
“情報戦”とも言われる野球で、相手のクセや戦略を分析しチームで共有するのは当然のことだ。一方で、NPB両リーグのアグリーメントでは打者にベンチ内やベースコーチ、走者から球種などを伝達してはならないと定められている。
巨人での投手コーチ経験がある野球評論家の関本四十四氏はこう指摘する。
「映像を見る限り、近本は、普通のランナーがやらない不自然な動作を明らかに行なっている。やっていないと主張しても、通らないでしょう。それにしても、やり方が下手すぎる。高校野球でもサイン盗みが問題になることがありますが、もっと巧妙にやっていますよ(笑い)」
球界のご意見番・江本孟紀氏は今回の騒動をこう喝破する。