東京に4回目の緊急事態宣言が発令されるなか、東京五輪は「無観客」で強行開催される。米国のニュース専門局CNBCは「東京五輪のさらなる挫折」、フランスの公共ラジオは電子版で「(ギロチンの)刃が落ちた」と報じた。日本の国民は、世界からそこまで言われ、自分たちの健康や生命と引き替えにしてまで五輪を開催する意義を見いだせないでいる。
この間、政治家は国民に根拠なき楽観論を振りまいて開催へ“特攻”していった。危険に追い込んだ政治家と五輪貴族は、「祭が始まれば、そんな怒りなど忘れるさ」とタカをくくっている。だからこそ、その亡国の発言をきちんと記録しておかなければならない。
「五輪開催強行」はこの言葉から始まった。
「人類が新型コロナに打ち勝った証として、完全な形で開催する」(安倍晋三・前首相)
昨年3月24日、当時の安倍晋三・首相はトーマス・バッハIOC(国際オリンピック委員会)会長との会談で五輪の1年延期方針を決め、こう語った。
「完全な形」の意味を安倍側近の萩生田光一・文科相はこう説明している。
「『完全な形』というのは、無観客にせず、きちんとした形で選手の皆さんに参加して頂く大会を目指すということだと思う」
政府は安倍発言に縛られ、中止もできず、無観客の判断も遅れて現在の事態を招いた。安倍氏は完全な形で開催できなかった責任をどう考えているのか。
さる7月10日の柏崎市での講演で、安倍氏は驚くべき言い方をした。無観客開催を「たいへん残念」と言いながらも、「自由と民主主義、人権、法の支配、基本的価値を共有する日本が(五輪を)成し遂げる」と開催の意義を訴えたのだ。
来年2月には北京冬季五輪が開催される。緊急事態宣言下でも、“東京が開催しなければコロナ後の最初の五輪を中国に取られてしまう”という論理のすり替え、責任逃れの論法である。