2年ぶりとなる米女子ツアーでの優勝を果たした東京五輪女子ゴルフ日本代表の畑岡奈紗。優勝したマラソン・クラシックには、韓国代表の朴仁妃、キム・セヨン、カナダ代表のブルック・ヘンダーソン、フィリピン代表の笹生優花らが出場しており、“オリンピックの前哨戦”ともいわれていた。そうしたなか、最終日が雨で中止になるというイレギュラーなかたちだったとはいえ、初日からトップを譲らず、54ホール時点の大会最少スコアを更新する完勝だった。
「笹生が優勝した6月の全米女子オープンでは、畑岡はプレーオフで負けての2位。その悔しさを忘れないようにと、畑岡はマラソン・クラシックで全米女子オープン開催会場のボールマーカーを使っていた。闘志を表に出すタイプではないが、負けず嫌いはトップクラスでしょう」(ツアー関係者)
五輪本番目前に調子を上げてきた畑岡だが、進化の背景に何があるのか。
マラソン・クラシックからは20グラム軽くした新しいセンターシャフトのパターを導入し、不規則な転がりを生むポアナ芝のグリーンを克服している。「パターを軽くすることで手が動きやすくなり、距離感が合って結果につながったのでは」(クラブデザイナーの松尾好員氏)とみられているが、パター選び以上に注目されるのが、畑岡の「コーチ選び」だ。近年は専属コーチをつけるプロが多いが、畑岡は決まったコーチの指導を受けない。ゴルフ担当記者が言う。
「ジュニア時代から『トミーアカデミー』に通っていたので中嶋常幸と師弟関係ともいえるが、基本的には自分の直面する課題に対して効果的なアドバイスができる専門家をその都度選んで、指導を仰ぐスタイルでやってきた。
昨年からはショットの改善のために元世界ランク1位のヤニ・ツェンやリディア・コを指導したコーチであるゲーリー・ギルクリストによるスイングチェックを受けていた。その結果、マラソン・クラシックではフェアウェーキープ率88%、パーオン率89%の数字となった。自らの課題が何か、いつも冷静に判断できているからこそできる芸当です」
五輪会場となる霞ヶ関CCは、ジュニア時代から慣れ親しんだコースだ。地の利を活かして、最もいい色のメダルを目指す。
※週刊ポスト2021年7月30日・8月6日号