東京・葛飾区立石にあるもつ焼きの名店『宇ち多゛』。大衆酒場の聖地といわれる立石の地で、連日大行列ができるこの店を「立石の聖地」と呼ぶ人も。つまり、聖地の聖地なのだ。ここまで酒飲みたちを惹きつける理由はなんだろうか。絶品のもつ焼き・煮込み、名物の酒、そして独自のルールなどなど、ひと言では語れない、その魅力に迫る。
『宇ち多゛』に行くことを「宇ち入り」と言うらしい。忠臣蔵の討ち入りにかけているのだろうが、実に言い得て妙だ。
入店するには行列必至。しかし、客はみな整然と並び、決して近隣の店舗や行き交う人の邪魔にはならない。店内は、空気がピンと張り詰めたような独特の雰囲気が漂っている。大声で笑ったり、ベロベロに酔っ払ったりはしない。みな、この店のルールを心得ているのだ。
「初めて訪れる前に、知っておいた方がいいよ」と馴染みの客が語る、この店ならではのルールはざっと以下の通りだ。
・酔っ払っての入店は禁止、その日の一軒目であること
・入店時にカバンは肩から外し、前に抱える
・店内での大声は控える
・提供される酒量には制限がある(基本は1人3杯まで)
・もつ焼きの頼み方は「部位、味つけ、焼き方」を言う(メニューには書いてない)
・会計は、皿の数。焼酎は自己申告
・禁煙
一見すると堅苦しい店なのかと思うが、「それはまるで違う」と『宇ち多゛』をこよなく愛すブロガー「宇ち中」さん(名前の由来は宇ち多゛中毒!)は語る。
「背筋をピッと伸ばしたくなる緊張感、これがハマるんです。最初は厳しい店なのかと思っちゃうかもしれないですが、実は、全てお客さん一人ひとりが満足できるように、よく考えられているんですね。この空間に身を置いていることに感謝の気持ちすら湧いてきますよ」
提供されるもつ煮は、「東京五大煮込み」の一軒に数えられることも。
もつ焼きは、丁寧な下処理がされた「レバ(肝臓)」「シロ(大腸)」「ガツ(胃)」「アブラ(頬)」「ハツ(心臓)」「カシラ(頭)」「ナンコツ(軟骨)」と多彩な部位があり、味つけは、「タレ」「塩」「味噌」「素焼き」が選べる。「よく焼き」とか「若焼き」といった焼き加減の好みにも応じてもらえるし、他にもボイルしただけの焼かないメニュー「生(なま)」というのもある。
「もつ独特のくさみはまったくありません。焼き物は部位によって、コリっとしたり、ふわっとしたりと違う食感があって、たまらないおいしさです」(宇ち中さん)
前述した通り、注文の仕方にはコツがある。「レバ、タレ」、「シロ、味噌、よく焼き」「タン、生、お酢(素焼きと生はお酢を入れてもらえる)」といった感じだ。
しかし、このコツさえ心得てしまえば、好みの味つけ、焼き加減で、多様な部位を堪能することができる。組み合わせを変えれば、かなりのバリエーションを味わえることになる。
そして、何より、同店を語る上でかかせないのが、名物の「うめ割り」。グラスになみなみと注がれた25度の「宝焼酎」に特製うめシロップを足したものだ。他に「ぶどう割り」もある。
特製のグラスいっぱいに注がれるため、一口目は口元をグラスに寄せて味わう。この「うめ割り」が、もつ煮やもつ焼きに素晴らしく合う。「宝焼酎」のコク、キレにほんのりと甘酸っぱさが加わった、ここでしか味わえない特別な酒だ。
雰囲気、酒、料理と三拍子揃った同店を一度訪れたら、その鮮烈な体験が忘れられなくなってしまうに違いない。
三代目・内田朋一郎専務は、店にこめた想いをこう語る。
「駅を降りて、立石の商店街をワクワクしながら通って、『今日は何を食べようか、カシラはまだ残ってるかな』とか考えながら、店の行列に並んでさ、ようやく席についたら、酒と料理にしっかり向き合う。飲み過ぎて酔っ払った他のお客さんにからまれたりしたら嫌じゃないですか。大声で笑っている人がいたら、オレ、注意させてもらうよ。オレをおっかないって感じる緊張感も含め、お客さんみんなが気持ち良く、おいしく、満足して帰って欲しいという想いで考えぬいたんです。
お客さんがうちの店で飲んで、食べて、暖簾をくぐって外に出たときに、『はぁ~』って、肩を回して緊張をほぐし『さあ、(立石の)次の店、行くか』って。そこまでのシーンを全て考えて、営業をしてます。この立石仲見世商店街には、コロッケ、おでん、餃子、寿司などの持ち帰りができるおいしい店がたくさんあるから、いろいろ買ってお土産にもして欲しいですね」
創業は、昭和21年。以来、立石の地で店を建て増ししながら今日の形になったという。
創業当時に設えたという特注の木製テーブルが並び、焼き場の壁はピカピカに磨き上げられている。丁寧に時を刻んできた重厚感、そして清々しさ。これぞ名店だ。
この『宇ち多゛』の三代目が監修したタカラ「焼酎ハイボール<立石 宇ち多゛のうめ割り風>」が全国で発売中だ。
「長年、うちのお客さんで、今は遠くに引っ越したりしてなかなか店まで来られない、そういった先輩たちに、うちのこと思い出してもらいたいという想いをこめながら、宝酒造さんと一緒に作ったんです。店の『うめ割り』は炭酸じゃないから、まったく同じじゃないんだけど、『うめ割り』の味を知ってるお客さんが飲んだら、みんな「あーー」ってうなずいてもらえる味に仕立てました」(三代目・内田専務)
パッケージは、『宇ち多゛』の暖簾をイメージしたえんじ色。裏面に描かれた、店の入口のイラストと説明を見ながら、『宇ち多゛』未体験の人は、いつか訪れる日を夢見て、現役常連やオールド常連は、名物の味を思い出して、是非、飲んでみて欲しい。
タカラ「焼酎ハイボール」は昭和20年代後半の東京下町の大衆酒場で生まれた焼酎ハイボールの味わいを追求し、宝酒造独自の技術を駆使したアルコール分7%の辛口チューハイだ。下町の名店とのコラボレーションで新たな価値が追加されたタカラ「焼酎ハイボール<立石 宇ち多゛のうめ割り風>」で、同店の世界観が堪能できるはずだ。
【編集後記】
取材を終え、商店街をぶらぶらした後、その日の営業を終えた『宇ち多゛』の前を再び通った。少しだけシャッターが開いていたので、挨拶しようと中を覗いてみたら、そこには、誰もいない店内で黙々とぬか漬けの樽に野菜を仕込む三代目店主の姿があった。「この店の2階で生まれた生粋の葛飾の人間」と語る店主は、地元に根付き、地域を盛り立てたいという強い気持ちを持っている。実は、タカラ「焼酎ハイボール<立石 宇ち多゛のうめ割り風>」の収益の一部は、店主の手で葛飾区の子供食堂に寄付されているのだが「寄付の話は、書かないで」と言われていた。しかし、丁寧に漬物を漬ける姿を見て、改めて店主の人柄と熱い想いに胸を打たれた記者はどうしても書かずにいられなくなってしまった。
【データ】
宇ち多゛
住所:東京都葛飾区 立石仲見世商店街内
営業時間:月~金 14:00ごろ~19:30ごろ(L.O)ただし売切れ次第終了、土 11:00ごろ~13:30ごろ(L.O)ただし売切れ次第終了
定休日:日曜、祝日
※緊急事態宣言中はルールに則っています。営業時間等は店舗にお問い合わせください。
タカラ「焼酎ハイボール<立石 宇ち多゛のうめ割り風>」
詳細はこちら
https://shochu-hiball.jp/lineup/meiten.html
撮影/ヤスクニ