7月には熱海をはじめ全国各地で線状降水帯が大雨を降らせ、甚大な被害を招いたが、大規模災害が年々季節を問わず増えるばかり。水害が起きたときのために、命を守る行動を知っておく必要があるだろう。
防災といえば、地震の被害を最小限に抑えるために家具などに器具をつけたり、防災グッズをそろえるなどの“備え”に重点を置きがちだが、実は「発生直後の行動が命を守るカギとなる」と言うのは、日本防災士会常務理事の甘中繁雄さん。
「災害を伝えるニュースで『直ちに命を守る行動を取ってください』と、呼びかけられることが増えたいま、一人ひとりが身の安全を確保した上で、生き延びるための行動を取ることが重要になっています」
水害や土砂災害の場合は、各自治体が警戒レベルに合わせた避難情報を発令する。これを注視し、警戒レベル4までに避難するのが基本だ。
「警戒レベル5が発令され、河川が氾濫したり、床上浸水しているタイミングで避難所に移動するのは、かえって危険です。避難が遅れて家にいる場合は、命を守る最善策として、2階や屋根に上る“垂直避難”で安全を確保し、救助を待ちましょう。
また、地震などで倒壊した家屋やがれきの下から1人を救出するには10人の力が必要といわれています。救助時の二次災害リスクを考えると、早めの避難は自分を含めて11人の命を守れることにつながります。そして、その11人が支援する側に回れるのです」(甘中さん・以下同)
ためらわず、「直ちに命を守る行動を取る」ことが重要だ。では、具体的にどうすればいいのか見ていこう。
自宅が浸水・冠水したら…
もしも、家の床上まで浸水したら2階以上に垂直避難し、さらに浸水が進む場合は屋根の上に避難をする。
また、助けを呼ぶ際には、大声で叫んでも声が届きにくく体力も消耗するだけで気づかれにくい。鏡やCDを手に持って反射させれば、遠くにいるヘリコプターやボートの救助隊も気づきやすいだろう。
流れてくる水は、下水並みの汚染度で雑菌が含まれているので極力触れてはいけない。
冠水した道路を歩くなら
避難所に向かう途中で雨が激しくなったり、道路が冠水した場合に、注意したいのが側溝やマンホール。ふたが外れているのに気づかず落ちてしまったら、命の危険に直結する。
「長い棒や杖、長傘などを手に持ち、足元を確認しながら歩くことが大切です。荷物は手に持たず、リュックや斜めがけバッグにして、棒を持っていない方の手は、自由に使えるようにしておきましょう。
冠水した道を歩く場合、水位の目安はひざ下まで。それより水位が低くても、水流が激しければ足を取られてしまう危険があります。足元はスニーカーなど歩きやすい靴にすること。水が入ると重くなる長靴や、けがをする恐れのあるサンダルは避けましょう」
避難所へ行く場合、マスクは必須。避難時は落下物や飛来物、漂流物でけがをしないように肌の露出は最小限に。両手は杖や長傘以外の荷物は持たないようにしよう。
取材・文/山下和恵
※女性セブン2021年8月12日号