懐かしのメダリストたちが聖火ランナーを務めた東京五輪2020の開会式。引退後も華々しく表舞台で活躍する元アスリートがいる一方で、表舞台から消えた「過去の英雄たち」もいる。記憶に刻まれたあのメダリストは今──。(文中敬称略)
ソ連を打ち破った決勝戦のテレビ視聴率は66.8%を記録──。1964年の東京五輪で戦後復興の象徴となったのが「東洋の魔女」と呼ばれた女子バレーの日本代表だ。
東京大会では控え選手だった松村勝美は、8年後のミュンヘン五輪で主将として日本代表を銀メダルに導いた。
当時は結果に満足できず「こんな銀メダルいらない」とつい口にした彼女は、帰国後に別の宝物を手に入れた。
「大会前に母が小島孝治監督に『30歳になるまでに結婚させてくれ』と頼んで、周囲が必死に相手を探していたんです。
それで五輪後の鹿児島国体で、全日本剣道選手権の覇者だった警察官の千葉仁さんを紹介されました。そのうちマスコミの注目の的になり、彼が『仕方がないから結婚してやっていこう』と言ったから、私は『仕方がないじゃ納得できない』と怒りました(笑)」
1973年にゴールイン。女子バレー主将と剣道覇者の「日本一カップル」は大きな話題を呼んだ。
「結婚した当時、ママさんバレーが流行した時期だったので、全国を回ってママさんバレーやジュニアバレーを指導していました。それも70歳を機にリタイアして、今はスポーツクラブで身体を動かすことが趣味ですね」
※週刊ポスト2021年8月13日号