中国内陸部の山西省太原市の天竜山石窟第8窟から100年近く前に盗掘され、日本に流出していた仏頭が太原市に戻り、博物館に展示されていることが分かった。海外に流出した同石窟の仏像が戻ってきたのは、この100年近くで初めて。仏頭をオークションで落札したコレクターが中国側の申し出を受けて、仏像を中国側に引き渡したという。
中国国家文物局によると、天竜山石窟は西暦386年から約200年続いた北朝時代に開削され、中国の全国重点文物保護単位(国宝・重要文化財に相当)に指定されている。1920年代の大規模な盗掘で240体以上の彫像が盗まれているが、中国に戻ってきたのは今回の仏頭が初めて。新華社通信が伝えた。
専門家によると、仏頭は天竜山石窟第8窟北壁の仏龕(ぶつがん)にある仏像の頭部で、1924年ごろに盗まれたと考えられている。鑑定結果を踏まえ、国家1級文化財に指定されている。
中国メディアによると、この仏頭は縦33.7cm、横30.4cm、高さ44.5cmで、重さは55.5kg。
仏頭を調査したところ、材料には主に石英と方解石が使用され、天竜山の岩体の特徴と一致しており、目立ったひび割れはみられなかった。頭頂部と耳には彩色の痕跡があり、仏像はもともと彩色されていたと推定されるという。
仏頭は日本で個人が所有していたが、昨年9月に競売に出品されたことを受け、同局が競売商に競売の中止と中国への引き渡しを求めていた。競売商の在日華僑が昨年10月、所有者から仏頭を買い取り、中国政府に寄贈することを決定。引き渡し式が行われた後、12月に北京に到着した。
その後、仏頭は今年3月14日まで北京魯迅博物館の「咸同斯福-天竜山石窟国宝帰還とデジタル復元特別展」で公開。今年7月に天竜山石窟に戻され、太原市天竜山石窟博物館で展示されている。