近年、急速に普及しているのが、患者の費用負担が少なくて済む「ジェネリック医薬品(後発医薬品)」だ。だが、昨年発覚した製薬2社の不祥事により、専門家から疑問の声が出始め、厚労省は全国のジェネリック工場に一斉検査を行なった。あなたが服用する薬は、本当に大丈夫か――。
コロナ禍で医療の逼迫が叫ばれるなか、昨年から今年にかけてジェネリック医薬品をめぐる“スキャンダル”が相次いだ。
富山市に本社があるジェネリック大手「日医工」では、出荷検査で不合格となった錠剤を取り換えて再試験したり、錠剤を砕いて再加工したりするなどの不正が明らかになった。発覚のきっかけは富山県などによる抜き打ちの立ち入り調査(2020年2月)で、少なくとも2011年からの10年間、工場長の指示で行なわれた「組織ぐるみ」の不正だったという。
同社は今年1月にかけ、抗アレルギー薬や胃腸薬、高血圧や糖尿病の治療薬など75品目を自主回収したが、3月、県から32日間の「業務停止命令」の処分を受けた。さらに、事態を重く見た厚労省が業務再開前に同社の立ち入り調査を実施。県の処分中に国が調査に踏み切るのは極めて異例のことだった。
2020年12月には、同じくジェネリックを手がける医薬品製造「小林化工」(福井県あわら市)で、同社の経口抗真菌剤(水虫薬)「イトラコナゾール錠」に、睡眠導入剤の成分が混入していた問題が発覚した。この薬を飲んだことによる意識消失や記憶喪失などの健康被害は100件以上報告され、なかには運転中に意識を失い、物損事故を起こしたケースもあったという。
混入は、工場で担当者が本来入れるべき成分と間違え保管場所から取り出したことが原因とされる。1錠あたりの混入量は、医師が睡眠導入剤として通常処方する10~20倍相当の5mgだった。同社は約10万錠の自主回収を決めたが、県は危険度が最も高い「クラス1」事案と判断、過去最長となる116日間の「業務停止命令」処分を下した。
ジェネリック医薬品で相次ぐ不正発覚などに危機感を募らせた厚労省は今年6~7月、都道府県と合同で全国の後発医薬品製造工場に一斉立ち入り検査を実施した。品質管理や製造手順の状況を確認し、8月にも結果の報告書をまとめるという。医療経済ジャーナリストの室井一辰氏が言う。
「国は医療費を削減する目的で先発薬に比べて安価なジェネリックの普及を推進してきました。ところがメーカーの不正発覚が続き、医薬品で最も重視されるべき品質や安全性に関し、重大な疑念が生じる状況になっているのです」