細田守監督(53才)による最新作『竜とそばかすの姫』が、7月16日より公開中だ。最初の土日2日間だけで観客動員数は45万9000人、興行収入は6億8000万円を突破し、堂々の初登場1位スタートを切った。夏休み期間に入ったということもあって、まだまだ数字は伸びていきそうだ。アニメーションと音楽が有機的に結びついた本作はSNSなどで高い評価を得ているが、特に主演声優と劇中歌を担当している中村佳穂(29才)への称賛の声が多く見られる。中村の魅力について、映画や演劇に詳しいライターの折田侑駿さんが解説する。
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本作は、映画『時をかける少女』や『サマーウォーズ』、第91回アカデミー賞長編アニメ映画賞にもノミネートされた『未来のミライ』など、数々の名作アニメを世に送り出してきた細田監督による最新作。臆病な性格の女子高生が、現実とネット世界とを往来しながら成長していく姿が描かれている。また、ロックバンド「King Gnu」の常田大希(29才)率いる「millennium parade」がメインテーマ曲を担当していることも大きな話題を呼んでいる。
物語のあらすじはこうだ。幼い頃に母を事故で亡くし、高知の田舎で父と2人暮らしをしている17才の女子高校生・すず(中村佳穂)。母と一緒に歌うことが好きだった彼女は、その死をきっかけに歌うことができなくなり、曲を作ることだけが生きる糧となっていた。そんなある日すずは、全世界50億人以上ものユーザーが集うネット上の仮想世界「U(ユー)」に参加。そこでは「As(アズ)」と呼ばれる自分の分身(アバター)を作り、全く別の人生を生きることができる。すずは「ベル」と名付けたAsとしてなら素直に歌うことができ、またたく間に“世界の歌姫”となっていく。
細田監督の作品世界を構成する声優陣にも注目だ。主人公・すずの友人らの役に配されているのは、大ヒットアニメ映画『君の名は。』での好演が話題となった成田凌(27才)に、音楽ユニット「YOASOBI」のメンバーとして活躍する幾田りら(20才)、今回3度目の細田作品への参加となる染谷将太(28才)や、目覚ましい俳優活動を展開する玉城ティナ(23才)たち。さらに、すずの父親役を役所広司(65才)が担当し、本作のキーパーソンであり、Uの世界で“竜”と呼ばれる存在の声を佐藤健(32才)が務めている。
この並びを見れば明らかだが、誰も彼もが今のエンターテインメント界に欠かせないプレイヤーたちだ。まるで協奏曲のようにそれぞれの演者たちが、声の表現で映画という作品の曲を奏でている。そして、その中心に“主旋律”として存在するのが、中村佳穂の声だ。ミュージシャンとして活躍する彼女が演技に挑戦するのは今回が初めて。しかし、音楽家としての彼女と同様に、そのパフォーマンス力、表現力の高さは映画でも遺憾なく発揮されているのだ。