不妊の原因の半分は「男性」にある──。これは2017年にWHO(世界保健機関)の調査によって明らかになったデータである。同調査によると、不妊の原因は、24%が「男性のみ」、24%が「男女とも」にあるとされる。一般的に「不妊治療」とは「女性が行うもの」というイメージを持つ男性が多いと言われている。しかし不妊の原因の半数近くを占めるのが「男性」であるなら、その認識は現実とズレていると言える。
不妊治療の保険適用をめぐっては、政府が具体的な検討を開始し、体外受精に加え人工授精について保険適用とする方向で議論されていることが報じられた。制度面では少しずつ改善の方向へ向かっているが、まだまだ多くの人の間では「不妊治療は女性が行うもの」というイメージが強いのはなぜなのか。
「これは私の個人的な経験や考え方も含まれますが、やはり不妊治療は“女性”を中心に行われている現状があるからだと思います。例えば男性側に不妊の原因があり、不妊治療を受ければ自然妊娠する可能性があっても、男性は治療を受けずに、女性の身体に負担がかかる顕微受精に進まれる夫婦がいらっしゃるのです」
そう語るのは、日本ではまだ数が少ない“男性不妊”専門クリニックである「MRしょうクリニック」を福岡市で営む医師の庄武彦氏だ。
「男性の中には自身の妊孕性(女性を妊娠させる力)について触れられたくないと感じる方が、少なからずいらっしゃいます。不妊治療に消極的な方の割合は、もしかすると女性より男性の方が多いかもしれません」
ではそもそも、男性不妊治療を専門とする病院が少ない理由は何だろうか。
「やはり世の中において“男性不妊”の診断及び治療が積極的に求められておらず、放置されていたということがあると思います。最近になって不妊の原因は男性側にもあるという厳然たる事実が認識されるようになり、男性不妊を専門とする施設は増加傾向にあります」(庄医師)