日本人選手たちのメダルラッシュに沸いている東京五輪2020。しかし、大会前から大きな期待が寄せられていた、メダル有力候補が敗れる波乱も続出している。
あるスポーツ紙の五輪担当記者は「開会式で聖火リレー最終ランナーを務めた大坂なおみ(23才)の3回戦敗退は、国内以上に海外で衝撃的な結果として報じられました」と解説する。
また「金メダル複数獲得も視野に入っていた競泳男子の瀬戸大也(27才)のメダルなしと、男子卓球界の『100年に1人の天才』と称された張本智和(18才)の4回戦敗退は想定外。そして、何よりも男子バドミントンの世界ランク1位・桃田賢斗(26才)の予選リーグ敗退も大波乱でした」と続けた。
大坂は、5月末の全仏OPでの記者会見拒否宣言とうつ病告白からの、休養明け初戦で、体調を心配する声もあがっていた。瀬戸も、昨年秋の不倫騒動による謹慎で、万全な調整ができなかった。
張本は、初戦の1日前倒しを大会運営側から知らされず、ラケットのラバーの張り替えもせずに焦って出場するなど、大一番にペースを乱された。
そして、桃田は、昨年に巻き込まれた交通事故での右眼窩底骨折と今年のコロナ感染と、不運が続いた。
「史上最年少13才の金メダリスト・スケートボード女子ストリートの西矢椛や体操男子個人総合の19才金メダリスト橋本大輝ら、ニューヒロイン、ニューヒーローが続々誕生する一方で、“五輪には魔物が棲む”ということも強く感じる大会になっています」(前出・スポーツ紙五輪担当記者)
期待に応える難しさを痛感する中、日本人にはひと際人気の高い陸上マラソンで、最後の砦となるのが男子の大迫傑(30才)だ。閉会式が行われる8月8日に大トリで開催される花形種目。しかも、7月29日に大迫は自身のSNSで「ラストレースにします」と五輪での引退を表明した。
大迫は「東京を自分自身の競技人生の最高のゴールにするためです。次があるっていう言い訳を強制的になくしたくて、この大会をゴールにしました。自分の持てる力の全てが出し切れる気がします」と説明した。
これまでも、日本陸上連盟相手に「選手選考の不透明さ」や「連盟の私物化」の声を上げるなど歯に衣を着せない“モノいうランナー”だった。五輪中継をするテレビ局のスポーツ担当者が語る。
「決意を公言して、さらに自分を追い込む、大迫らしい行動です。もともと超のつく負けず嫌いで言い訳も大嫌い。プライベートでも学生時代に元SKE48の研究生だった2才上の女性と結婚。今は2人の子供を持ち、海外で家族と生活するのも他のマラソンランナーとは異なり、“語れる”部分が多い」
日本屈指のランナーであることには違いないが、瀬戸や桃田と違い、大迫は世界的に見てメダルの有力候補というわけではない。
「瀬戸や桃田は五輪前に金メダル獲得宣言とも取れる発言をしていますが、大迫は彼らとは違いますね。ライバルのケニア勢は実力が飛び抜けていて、前評判では大迫の分は悪い。自分の立場をわかっているゆえに大口は叩かなかったのでしょうが、かなりのハードトレーニングを積んできており、当然メダルを狙った調整をしてきているはずです」(同前)