「熱が出た。コロナだ!」と大騒ぎで検査を受けると病院で「陰性。夏風邪ですね」とアッサリ。逆に、「クーラーつけすぎて鼻水が出ちゃって」と笑っていると急に肺炎になって「陽性。すぐ入院!」となることも。その体調不良、コロナなのか、ただの風邪なのか、それが問題だ!
「小学2年生の娘が鼻水でグズグズやり始めたのは、終業式の3日後でした。7月に入ってからクーラーをつけっぱなしで寝ていたので、夏風邪をひいたのだろうと思って、市販薬をのませていました。でも、1週間経っても症状が治まらないばかりか、ひどく咳込むようになったので、近くのクリニックを受診したんです」
都内の主婦、中村静さん(仮名・43才)は声を震わせながらこう話す。娘は微熱ながら、咳が一晩中続いたことで歩けないほどぐったり。クリニックへは、中村さんがおぶって行った。
「病院ではすぐにPCR検査をすすめられ、結局、家族全員がコロナ陽性であることがわかりました。幸いにも、夏休みに入ってからの発症だったので、娘のクラスに濃厚接触者はいませんでした。クラスターが発生していたらと思うとゾッとします……」(中村さん)
夏風邪かと思ったらコロナだった──いまこのようなケースが急増している。その“主犯”は、世界的に感染が拡大する新型コロナの変異株・デルタ株だ。東京都健康安全研究センターなどのスクリーニング検査によると、7月第3週では、東京都の新規感染者のうち46.33%がデルタ株の感染者だった。大阪府でも直近は4人に1人がデルタ株の感染だった。特に気になるのは子供の陽性者が増えていること。
「7月以降、爆発的に死者数が増えているインドネシアでは、感染者の10%以上が子供で、1週間で150人以上の子供が亡くなり、その半数が5才未満でした。現地ではいま、12才以上の子供へのワクチン接種が急ピッチで進められています」(全国紙国際報道部記者)
日本でも千葉市の幼稚園で7月末までに67人のクラスターが発生。青森県八戸市の小学校でも、関係者含め14人のクラスターが起きた。デルタ株の魔の手が子供を含むすべての人に迫るなか、注視したいのがこれまでと違う「感染時の症状」だ。もちづき耳鼻咽喉科院長の望月優一郎さんはこう指摘する。
「これまでの新型コロナでは、嗅覚障害や味覚障害が出る人が多かった。一方、デルタ株では少なくなっています。代わりに強く出るようになったのが、頭痛やのどの痛み、発熱など、まさに夏風邪をこじらせたような症状です。その結果、“夏風邪だから放っておけば治るだろう”と積極的に受診せず、感染が広がっていると考えられます」
症状が夏風邪に似ているからといって、ウイルスが弱くなったわけではない。シンガポール国立感染症センターは、デルタ株は従来株に比べ、重症化や死亡のリスクが4.9倍になると発表している。