未成年女性への性的暴行疑惑で世間の話題をさらった韓国の人気ボーイズグループ「EXO」の元メンバーで、中国で俳優として活動していた中国系カナダ人、クリスこと呉亦凡(ウー・イーファン)。7月末に強姦容疑で逮捕されると、中国では共産党を巻き込んだ大騒動に発展している。そこにはさまざまな人物の思惑も交差しているというが、どういうことなのか、中国の経済、社会に詳しいジャーナリストの高口康太さんが解説する。
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7月31日夜、中国のネットに激震が走った。中国のトップアイドル、クリス・ウー(呉亦凡、ウー・イーファン)が強姦罪容疑で刑事拘留されていると北京市警察が発表したのだ。
「ぼくのミュージックビデオに出演させてあげるから」などと女性たちを誘い関係を持ち、しかもその中には未成年も含まれている……まだ容疑の詳細は明らかになっていないとはいえ、ネットに流れる噂の少なくとも一部は事実であると警察が裏付けた格好だ。年間数十億円を稼ぎ出すスーパーアイドルはなぜ地獄に落ちたのか。
「クリス・ウーは『四天王』と呼ばれるトップアイドルの一人。韓流アイドルグループ『EXO』のメンバーとして2012年にデビューし、脱退した後はソロの芸能人として歌にドラマ、バラエティと大活躍していました」
中国のアイドル事情に詳しい、マーケターの安田加奈子・エーランド株式会社代表は解説する。
「しかも、中国では今、アイドル経済が急成長していて、ビジネスに与える影響力は日本以上。アイドルなどの芸能人を広告やアンバサダーに起用するのは日本でもよくある話ですが、中国ではファンたちが推しのアイドルの実力を証明するために、売上を上げようと組織的に爆買いしている点が異色なんです。『うちのクリスくんをアンバサダーにすると、売上が1億元(約17億円)伸びる!』みたいに、数字を作ってあげるためにファンが動く。実際にアンバサダーに起用したら、いくら売れたかという数字もきっちり発表します」
このアイドルの戦闘力(=ファンの購買力)は1億元です!という具合に、売るパワーが明示されるのが中国流というわけだ。
「クリスは元祖”モノ売るアイドル“です。中国メディアの報道によると、アンバサダー起用の契約金は年間1500万元(約2億5000万円)。問題発覚時には15社と契約していたので、契約料だけで40億円近いですね。この稼ぎ以上にスポンサー企業の売上を生み出していたわけですから、逮捕はもはや芸能ゴシップの枠を超えて、経済ニュースになっています」(安田さん)
スーパーアイドル逮捕の背景に、一体何があったのか。始まりは、ネットの告発文だった。
「中国インフルエンサーの都美竹さんが7月18日、ソーシャルメディアで『決戦書』と題したクリスの告発文を公開しました。彼女はこれまで、今年6月ぐらいからクリスと体の関係を持ったが捨てられたと発言してきましたが、決戦書では『24時間以内に芸能界引退を発表して直筆の謝罪文を公表し中国を立ち去れ、さもないと決定的な証拠を出す』と宣言しました。これが爆発的な話題となったのです」