夏の風物詩である「スイカ」。猛暑が続くなか、食べる機会も増えているだろうが、スイカには健康を脅かす「裏の顔」があると医者が警鐘を鳴らす。
都内に住む65歳の男性Aさんは昨夏、大好物のスイカを夫婦で週に1玉は食べていた。ところがある日、スイカを食べた1時間後に、ブルブルと手や唇が痺れる症状が起きた。さらに吐き気と悪寒で動けなくなり、慌てて家族が119番通報。搬送された病院で医者から告げられたのは、意外な一言だった。
「ひょっとしたら、スイカが原因かもしれませんね」
Aさんが振り返る。
「お医者さんにこう言われて驚きました。ネットや雑誌でも体に良いと書いてあったのに……」
ビタミンAやC、老化予防効果を持つリコピンなどの栄養素を含むスイカだが、実は落とし穴がある。
大阪市立総合医療センター腎臓・高血圧内科の森川貴医師が語る。
「スイカは成分の90%以上が水分ですが、カリウムが非常に多く含まれています。カリウムはナトリウム(塩)を尿で排出しやすくして血圧を調整したり、心臓の動きに関係したりする大切な物質です。
健康な方なら問題ない含有量ですが、腎機能が衰えている人は別。尿からカリウムを上手く排出できないため、スイカを食べると体内にカリウムが溜まってしまう『高カリウム血症』を発症することがあります」
高カリウム血症は、手足や唇の痺れ、不整脈、胸の痛み、悪寒や吐き気といった症状が現われ、最悪の場合は心室細動を起こして心停止することもある。
「命に関わる不整脈など重度の症状だと、入院のうえ点滴治療や緊急血液透析を行なう必要があります」(森川医師)
Aさんも「慢性腎臓病」の持病を抱えていた。そのため、スイカが原因で高カリウム血症を引き起こした可能性が考えられたという。
「“スイカは腎臓に良い”と勘違いしている人が割とおられるのが問題です。スイカの持つ利尿作用とむくみ改善効果などが腎臓に良いと結びついたのかもしれません。それを信じてスイカを食べ過ぎて、高カリウム血症になり入院した患者を見てきました。
慢性腎臓病などを抱え、健常者より腎機能が衰えている人は、基本的にスイカを食べるのは避けたほうが無難でしょう」(同前)