日々の生活に欠かせないスマートフォン。次世代通信規格「5G」も整備され、映画もドラマも東京五輪中継もニュースも、手元の小さなスマホで見ることができるようになった。ただ、小さな画面で動画を見続けることには、リスクもあるという。二本松眼科病院の眼科専門医・平松類さんは目に与える影響を憂慮する。
「そもそもスマホで動画を見るときは、テレビよりも圧倒的に目から画面までの距離が近いことが問題です。さらに、テキストならば長時間にわたって読み続けることは難しいですが、動画は際限なく見ることができるため、目への負担も大きくなるのです」(平松さん)
平松さんがまず懸念するのはドライアイだ。
「至近距離で動画を見続けるとまばたきが少なくなり、目が乾きやすくドライアイの原因になる。ドライアイは進行すれば眼精疲労や視力低下、最悪の場合は失明の恐れすらある重篤な状態です。スマホ画面から出るブルーライトにも問題があり、睡眠の質を高めるホルモンであるメラトニンが分泌されにくくなり、眠っていても目が受けたダメージが持ち越されてしまうことになる。
さらに近い距離で画面を見続けることで目のピント調節能力が低下し、スマホ老眼になりやすい。実際にコロナ以降、NetflixやAmazon Primeの動画にはまり、目の不調を訴えてスマホ老眼になる中高年が増えました」(平松さん)
体が蝕まれてなお、動画を見続ければその弊害は精神までおよぶことになる。認知症の専門医で「もの忘れ外来」を開設するおくむらメモリークリニック院長の奥村歩さんはこう話す。
「動画を見て好奇心が満たされると、脳はさらなる刺激を求めるようになり、ますますスマホに依存するようになります。すると脳内物質のセロトニンの分泌が少なくなってうつになったり、アルコール中毒者と同じように、流れていないスマホの動画が流れているような錯覚を抱くことがある。寝ても覚めてもスマホのことばかり気になって、不眠症になる患者も少なくありません」
退屈しのぎに押した再生ボタンひとつに、体と心を壊される可能性がある。
※女性セブン2021年8月19・26日号