「小林化工や日医工といった後発医薬品(ジェネリック)の製造業者に製造時の違反で行政処分(業務停止命令)が行なわれたことを受けて、幅広く確認を行なうために、立ち入り検査を実施しました」
そう説明するのは、厚生労働省医薬・生活衛生局監視指導・麻薬対策課の担当職員だ。
いま、ジェネリック医薬品の「安全性」への疑念が高まり、業界を揺るがす問題となっている。昨年、ジェネリックメーカーの不正が立て続けに発覚したのだ。
日医工(富山市)では、2020年2月、組織的な不正が発覚。小林化工(福井県あわら市)では、2020年12月、経口抗真菌剤(水虫薬)に睡眠導入剤の成分が誤って混入していたことがわかった。
そもそもジェネリック医薬品とは、新薬(先発薬)の特許が切れた後に販売される、新薬と同じ有効成分の薬を指す。開発費が少なくて済むぶん、販売価格も患者の自己負担も抑えられる特徴がある。
そうしたジェネリック医薬品で相次ぐ不祥事。ついに厚労省が本格的に動き出し、全国のジェネリック製造工場などを対象に「6月1日~7月16日にかけて初の一斉抜き打ち検査を実施」(厚労省担当者)したのだ(結果は8月中に公表される予定)。
一方、「医療費削減」を目指す政府はこれまで「ジェネリック医薬品」の普及拡大を推進してきた。医療機関や調剤薬局では、ジェネリック使用割合に応じて報酬加算が行なわれる。
2013年に46.9%だったジェネリックの使用割合は直近(2020年9月速報値)で78.3%に達し、政府目標「2020年9月までに80%」をほぼ達成している。市場規模では1兆円を超え、今後も拡大する見込みだ。しかし、こうした普及ぶりに反するデータがある。
厚労省が年度に2回公表する保険者(健康保険組合)別の「ジェネリック使用率」のデータだ。最新版(2020年9月診療分)の全国平均は約8割だが、医師やその家族らが加入する各都道府県の「医師国民健康保険組合」のジェネリック使用率は平均“約6割”にとどまり、全体平均を大きく下回っている。
このデータからは「医師ほどジェネリックを飲まない」実情が窺える。そこで、自らが薬を飲む場合に先発薬を選ぶという医師たちに、その理由を尋ねた。