地震予知に向けた研究は今も日々進められている。理化学研究所や東京大学、九州大学などのチームは、今年度中に南海トラフ地震と豪雨が同時に起きる複合災害の被害規模を、世界一のスーパーコンピューター「富岳」を使って推定する予定だと報じられた。日本地震予知学会会長で、東海大学海洋研究所客員教授の長尾年恭氏が解説する。
「地震による被害をシミュレートする技術は非常に進んでいて、避難方法などの“減災”に役立てられています。量子コンピューターなど、計算技術の発達でさらに進化を遂げるでしょう。
一方で、次に地震がいつ起きるかの予知技術には、地震学だけでなく異分野参入による進歩が期待されています。例えば金型工学といって、自動車などの金型製品は破損を防ぐための研究が重ねられていますが、そうした金型の破損の研究を地盤、地震にあてはめられないか、といった共同研究に期待がかかります」
111の活火山が存在する日本は火山大国でもあり、地震との関係も深い、噴火予知のための研究や観測が続けられている。京都大学名誉教授の鎌田浩毅氏(火山学)が、解説する。
「人の顔が一人ひとり違うように活火山もそれぞれ性質があり、噴火予知の方法も違います。富士山の場合、地下で現われる火山性微動、深部低周波地震などの兆候が噴火に繋がる可能性があり、他の活火山でも山体の膨張、火山ガスの成分・濃度の変化などが研究されています」
ただし、地震と同様に“噴火流言”には警戒が必要だという。
「昨今も『8月20日に富士山が噴火する』とネット上で広まりましたが、噴火も地震と同様、そうしたピンポイント予知は現状、できません。そうした情報は科学的ではないと心に留めておいてください」
※週刊ポスト2021年8月20日号