電動化や運転支援システムの進化などハイテク化が著しい現代のクルマ。だが、敢えて運転する楽しみを求めてオシャレな“ローテク車”に乗る選択肢もある。自動車ジャーナリストの井元康一郎氏が、イタリアの自動車メーカー、フィアットの人気古参モデル「500C」を試乗して、その魅力を余すところなくレポートする。
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とどまるところを知らないクルマのハイテク化。昨今のSDGs(持続可能な開発目標)推しに伴う電動化、クルマの周囲を監視して危険を察知すると自動的にブレーキをかけたり車線逸脱を防いだりする先進運転支援システム「ADAS」、クルマをネット端末化するコネクティビティ等々。
電動化やADASについては、今後それなしでは新車を販売できないという時代すら遠からず到来しそうである。ADASは国産車が2021年11月以降に出る新型車から、輸入車は2024年7月から装備が義務化される。すでに発売されているクルマについては一艇期間の猶予があるが、今日からの猶予期間が長い輸入車でもデッドラインは5年後の2026年7月。世界におけるADAS義務化の急先鋒はここ、日本だ。
ハイテク化から漏れたクルマたち
電気自動車推しも欧州を中心にとどまるところを知らない。世界ではエンジン車の販売禁止年月を区切るのが流行りとなっており、各国政府が「わが国は2035年」「オレたちは2030年だ」と、ラディカルな公約の発表合戦となっている。
再生可能エネルギー由来の液体燃料「eフューエル」や純水素を使えばエンジンも生き残りが可能ではあるが、eフューエルはエネルギー収支の低さから宿命的にコストが高く、内燃機関の熱効率の低さと相まって、現実的なソリューションになる見込みはまったく立っていない。
こんな世情である。ハイテク化から漏れたクルマたちの肩身は狭くなる一方だ。ホンダは電動化、ADAS搭載などの対応が難しいとして、販売が低迷していた軽スポーツ「S660」の生産中止を2024年までの猶予期限を待つことなく早々と決めた。
ローテクな軽スポーツカーというと、ダイハツが作る「コペン」もあるが、今の状況だとこれもいつディスコン(モデル廃止)になるかわかったものではない。衝突軽減ブレーキの確実性を上げるという観点では、MT(手動変速機)モデルも難しい立場に追いやられるだろう。今は文字通り、ローテク車に乗るラストチャンスになりつつあるのだ。