同僚や友達とわいわい飲み交わした記憶などもはや遠い昔のようだが、ノーマスクで騒ぐ海外の映像を見れば、やはり羨ましく感じてしまう。ちょっと気が早いかもしれないが、今年の年末は忘年会が開けるのだろうか。
最後まで無観客で寂しい印象を残した東京五輪の閉会式で、日本国民の度肝を抜いたのが2024年パリ五輪への引き継ぎ式だった。生中継でエッフェル塔近くの特設会場が映ると、大群衆のパリ市民やフランス代表のメダリストらがノーマスクで歓声を上げる様子に、日本のネット上では「本当に生中継なのか」「同じコロナ禍の世界じゃないみたい」と驚きの声が上がった。
そして多くの視聴者は思ったことだろう。日本では一体いつになったら、こんなふうに気兼ねせず集まれるようになるのか──。
実は日本とフランスに大きな感染状況の差があるわけではない。日本では連日全国で1万人を超える新規感染者が出ているが、フランスでは閉会式が行なわれた8月8日にも2万人を超える感染者が出ている。人口が日本の約半分(6700万人)であることを考えると、人口比では日本の4倍ほどの感染者数になる。
ところが、フランスでは飲食店も普通に開いており、人々も活動を自粛するムードはない。日本と何が違うのか。
「ワクチン接種のスピードです。マクロン大統領はすでに人口の半分がワクチン接種を完了したとアピールしており、6月から夜間の外出禁止を解除しました。ワクチンさえ打てば飲食店にでも商業施設にでもどこでも自由に行っていいと、若者にも接種を促しています」(在仏日本人ジャーナリスト)
飲食店などの入場に際してワクチンの接種証明を義務づけることには批判も上がっているが、ワクチンの普及によってパリ市民が愛する「カフェ文化」が復活したことは間違いない。
日本のワクチン接種状況はどうか。首相官邸公表の接種実績によると、65歳以上の高齢者でワクチンを1回接種した人は87.3%、2回接種した人は80.0%に達し、国民全体の32.7%が2回接種を終えている(8月5日時点)。欧米が軒並み5割ほどに到達していることを考えると遅れている印象は否めないが、目標に近づいてはいる。
「10月から11月にかけて必要な国民、希望する方全ての接種を終えたい」との政府方針について、河野太郎・ワクチン担当大臣を補佐する政策参与も見通しを示す。
「毎週出せる供給量の限界量を超える依頼が自治体からあり、『ワクチン不足』と報じられたが、基本的に当初の計画通りワクチンを確保しています。今後も9月末までにファイザー1億7000万回分、モデルナ5000万回分が来る予定で、アレルギーのある人などにアストラゼネカ製のワクチンも供給していきます」