臨床心理士・経営心理コンサルタントの岡村美奈さんが、気になったニュースや著名人をピックアップ。心理士の視点から、今起きている出来事の背景や人々の心理状態を分析する。今回は、またしても発言が批判を呼んでいる丸川珠代五輪担当相について。
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世論を二分しながらも開催された東京五輪が閉会した。日本がメダルラッシュに沸いているうちに、国際オリンピック委員会(IOC)や大会組織委員会、菅政権への批判など忘れていたのだが、最後の最後に彼らの体質や体制をしっかり思い出させてくれたのは、やはり五輪担当相である丸川珠代氏だった。
開催前は何かと問題発言を繰り返し話題となっていた丸川五輪担当相。6月には、新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長の発言に対し「全く別の地平から見てきた言葉」と述べたり、会場での酒類販売に関してもスポンサーに忖度するような発言をして批判を浴びた。このコラムでも、「ブーメラン効果」として、発言が本人の意図や思惑とは逆の効果を生んだと分析した。開催期間中はそんな発言も影を潜め、丸川五輪相が表舞台に出てくることはなかった。
だが、やはり担当相だけのことはある。東京五輪が終わった途端、その存在感をアピールするかのように話題の主に返り咲いた。今回、新たに世間の批判を浴びることとなったのは、8月9日に銀座を散策する姿を目撃され問題になったIOCのトーマス・バッハ会長に対する発言だ。
開催期間中、組織委員会が進めていた新型コロナ感染症対策である「バブル方式」のほころびがあちこちで指摘され、不安視する声が上がった。東京や近県は緊急事態宣言中、連日感染者が増加していたが、閉会式が近づくにつれ、各国の選手らや報道関係者らの姿が繁華街や観光地で目撃され始めた。日本国民に対し安心安全を声高に叫び、選手が関係者の行動を規制する「プレーブック」を作成・配布した上で開催したはずだが、やはり抜け穴はそこかしこにあったのだ。
個人的な心情としては、バッハ会長の銀ブラ問題もこの抜け穴と同じだ。加藤勝信官房長官は「入国後15日を経過したものについてはこれら(プレーブック)のルールの適用は受けない」と述べたが、常識的な感覚としては、選手や関係者が日本に到着したその時から、この地を離れるまでが“安心安全”な期間や範疇に入ると思うのだ。これまで何度も安心安全を口にしていた張本人が、15日が経ち閉会したからといって警護を従え観光するというのは、どうにも納得がいかない。