日本では、新型コロナウイルス感染症に対する政策に不満があっても、欧米のように暴動が起きてはいない。だからといって「日常」が取り戻せないことに納得しているわけではないようで、様々な場所で、ほころびが出始めている。通常営業を始めた江ノ島の海の家と、そこに集う若者たちの様子を、ライターの森鷹久氏がレポートする。
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湘南の景勝地・江ノ島を望む防波堤に立つと、聞こえてくるのはさざ波と風の音…ではなく、若者に人気のヒップホップやEDMと呼ばれる大音量のダンスミュージックに、缶ビールや酒瓶片手に千鳥足で歩いている若い男女の黄色い声だ。
「いやー、マジでコレを待ってました。2年ぶりですよ、2年。もういいっしょって感じです!」
両腕に入ったタトゥーが見えないほど真っ黒に焼き上がった肌の会社員・持田裕樹さん(仮名・20代)は、この夏すでに10日以上、ここにやってきては酒を飲み、大騒ぎをしている。もちろん、マスクは未着用だ。
付近では、複数の海の家がコロナ前のように普通に営業していて、客も客で、やはりコロナ前のように水着にサングラス姿で普通に海の家を訪れ、食事したり飲酒をしているのだ。近隣住人が声を潜める。
「去年は海の家が中止だったから、ほとんど人は集まりませんでした。でも今年は、全部とは言わないけど、いくつかの海の家が営業しているでしょ。散歩がてらに見に行ったら、イレズミの若い人がたくさん半裸で歩いていて、ズンズンドンドン音楽も聞こえて、ほとんどディスコ状態。それでも、誰も注意しないんだから」(近隣住人)
海の家では、ほぼ全ての店で自粛が求められているはずの酒が販売されており、若者たちが競い合うように飲酒を繰り返している。筆者も実際に海の家の様子を確認したが、およそ2年ぶりに海で遊ぶという高揚感があるのか、若者たちのテンションは異常といえるほどに高い。
「だから、毎日のように喧嘩が起きているって聞きますね。警察もよく来ます」(持田さん)
付近の商店店主によれば、海の家がある一帯は組合の管轄内で、自治体からの指導があっても、感染対策を講じるどころか、知らぬ存ぜぬという態度で営業し、酒の販売も続けているという。