オーストラリア駐在の日本大使と中国大使による、ある行事に参加した際のやり取りが話題になっている。中国大使館は、山上信吾大使が豪政府の対中政策について語った内容が不穏当であり、日本の第二次世界大戦中の軍国主義的な行為について美化しようとしたと発表した。しかし、日本大使館はオーストラリア放送協会(ABC)の取材に対して、「山上大使は第2次世界大戦中の日本軍の動きについては何も触れていない」などと否定しており、両者の言い分が食い違っている。ABCは中国側の言い分に矛盾があるとしている。
中国大使館はホームページ上で、大使館の報道官による声明を掲載し、「先日、キャンベラで行われた外交行事で(日本大使は)第二次世界大戦における日本の軍国主義者による残忍な侵略と残虐行為を白紙に戻し、さらには美化しようと露骨に試みた」などと指摘したうえで、「中国の国内総生産(GDP)は2010年に、すでに日本を上回ったが、残念なことに帝国の夢を抱く少数の日本人はこの現実を受け入れないようだ」との挑発的な言葉を添えている。
これに着目したABCは「極めて異例な発言」であり、日中間の外交問題として、日本大使館に連絡。「中国側が日本大使を叱責しているが、具体的にどのような機会に、どのような理由で、彼らはそのように言っているのか」と質問した。
これに対して、日本大使館は「山上大使は7月21日、オーストラリアの全国記者クラブに出席し、『日本は中国との関係維持が難しく、豪州は中国との競争において、途方もない圧力を前にしても、一貫性、原則性、弾力性のある方法で対応している」として、豪政府の対中政策を評価したという。
この大使の発言に対する反論が中国大使館報道官の声明だとみられるが、日本側は「山上大使は同日のイベントで、第二次世界大戦について言及していなかった」ことを明らかにしている。
さらに、中国側の声明では、山上大使の「発言」に対して「中国大使はその場で非難した」としているが、日本大使館によると、「21日の同イベントに中国大使は参加していなかった」と指摘した。つまり、中国大使は山上大使に対して、会場で反論することは不可能だったことが判明している。