鉄道を撮影するマニアたち、いわゆる“撮り鉄”の事件簿に新たなトラブルが加わった。8月5日の深夜、江ノ島電鉄線(神奈川県)での旧型車両の試運転を撮影しようと待ち構える多くの撮り鉄の前に、自転車に乗った男性が現れた。撮影に写り込んでしまった男性は、複数の撮り鉄に囲まれて暴言を吐かれる事態に。一連の様子を撮影した動画はSNS上で拡散され、撮り鉄が男性に慰謝料を求めようというのか、「金だろ!」という声もあった。
線路内への立ち入りなど、撮り鉄たちの暴走ぶりは長年問題視されている。今年4月には、東京都八王子市の踏切付近で私有地に植えられた木が何者かに切り倒されているのが発見された。現場が鉄道撮影で人気のスポットだったことから、撮り鉄の関与を疑う声もある。
また、同じく今年4月、埼玉県・西川口駅のホームにて、19歳の少年が列車の撮影をめぐりトラブルになった男子中学生に大怪我を負わせる事件も発生。少年は傷害などの容疑で逮捕された。
鉄道撮影がトラブルに発展する一因としては、チャンスがごく限られていることが挙げられる。何しろ被写体は一瞬で走り去ってしまう乗り物だ。しかもラストランや試運転となると、「今日は失敗したから、また明日」とはいかない。その上、周囲には大勢のライバルの撮り鉄がいる。一方で、駅や線路脇などの撮影スポットは、鉄道撮影に理解のない人々も普通に通行するのだ。
たしかに、せっかく高価な機材を用意して撮影に臨んだのに肝心のタイミングでアクシデントが起きてしまったら、泣きたくなる気持ちはわからないでもない。そこで「泣きたくなる」だけで終わらなかったのが、上記に挙げたようなトラブルなわけだが……。
プロの鉄道写真家として、『のりものアルバム』シリーズ(講談社)などを手掛ける広田泉氏も、撮り鉄業界のマナー向上を願うひとりだ。