世界中で未曽有のパニックを巻き起こしている新型コロナウイルスだが、われわれが警戒すべきウイルスはほかにもある。“コロナ以外のリスク”への対策も決して疎かにしてはいけない。たとえば肝炎では現在、国内で300万~370万もの人が苦しんでいる。コロナ禍のなか開催された、肝炎の啓発イベントをレポートする。
「新型コロナウイルスが蔓延していますが、肝炎も同じくウイルス感染で引き起こされる病気です。沈黙の臓器と呼ばれる肝臓を蝕む肝炎は自覚のないまま症状が進み、新型コロナウイルスよりも患者数や死亡率が高い“命を脅かすウイルス”といえます。ぜひ皆さんの理解、認識を深めていただきたいと願います」
と言う杉良太郎(77才)の力強い言葉で幕を上げた、「知って、肝炎プロジェクト 世界・日本肝炎デー2021」。肝炎の知識を広め、肝炎ウイルスの検査を受けてもらうための啓発活動を行う「知って、肝炎プロジェクト」は、今年で10年目を迎える。
厚生労働省の健康行政特別参与を務める杉は、コロナ禍での活動の大変さと重要性を語った。
「肝炎は重症化すれば肝硬変や肝がんにつながるリスクがあります。プロジェクトが発足した10年前は活動も暗中模索でしたが、5年前から重点的に普及啓発を行う『集中広報県』を設け、その甲斐もあって、肝がんの死亡率で全国トップだった佐賀県が、20年ぶりにワースト1の汚名を返上。そうして活動が実を結んできたところでコロナ禍に見舞われました。
各地へ赴いて思いの丈を皆さんへ伝えるのがいちばんなのですが、そもそも人を集めることが困難となり、活動が大きく制限されることに。身動きが取れずに『肝炎の啓発を疎かにしていいのか』と自問自答の日々でしたが、コロナに負けていられない!
われわれがアクションを起こすことで1人でも2人でも命を救うことができたらという覚悟で、こうして活動に臨んでいます」
7月29日に都内で開かれたイベントは2部構成で、第1部では肝炎の専門家を交えたフォーラムが行われた。
国立国際医療研究センター、肝炎・免疫研究センターの医師の学術講演に始まり、集中広報県に指定されている和歌山県、福岡県、宮崎県の医師がリモートで肝炎の現状と取り組みを報告。
「知って、肝炎プロジェクト」からはほかにも肝炎対策特別大使の伍代夏子(59才)、肝炎対策広報大使の徳光和夫(80才)、スペシャルサポーターの高橋みなみ(30才)も参加し、活発な意見交換となった。
ただし集客は控えられ、イベントの様子は動画配信に。
「大人数を集めるイベントからポスター掲示や動画配信の活動へシフトする一方で、今年は集中広報県を1県から3県へ増やして活動の幅を広げています。かつては肝炎への偏見があって、感染がわかってもひた隠しに隠して治療に踏み切れないなどの悲劇も生まれました。また、治療に伴う発熱や倦怠感、貧血症状や脱毛などのつらい副作用に悩まされる時代もあった。妻(伍代)もその時代にC型肝炎を治療して克服した1人です。
ですが、今は医療の進歩により副作用の少ないのみ薬でC型肝炎が完治できる時代になりました。肝炎は早期に発見することで適切な治療を受け、慢性化や重症化を防ぐことができます。どうか怖がらず、嫌がらず、検査をして早く発見してほしい」(杉)