スポーツ

憧れの甲子園のマウンドへ 女子決勝に臨む島野愛友利さんの思い

中学生の頃の島野愛友利選手(2018年撮影、写真/藤岡雅樹)

中学生の頃の島野愛友利選手(2018年撮影、写真/藤岡雅樹)

 雨とコロナにたたられたこの夏の甲子園は8月23日の第1試合「大阪桐蔭(大阪)対近江(滋賀)」が終わればようやくベスト16が出そろう。大会が佳境に向かう一方で、同日の17時から、同じ甲子園球場を舞台に開催されるのが第25回全国高校女子硬式野球選手権大会の決勝だ。注目は中学時代、男子が中心の硬式野球・大淀ボーイズに所属し、日本一となった経験を持つ神戸弘陵のエース・島野愛友利(あゆり)さん(3年)である。

 3年前(2018年)の夏が始まる頃、大阪・淀川の河川敷で練習に励む中学3年生の野球少女と出会った。大淀ボーイズに所属していた彼女は、中学硬式野球という“男社会”で、ポニーテールに結った長い髪をなびかせ、地を這うような直球を投げ込んでいた。背番号は「1」。最速119キロで、このチームのエースだった。体の柔軟性を活かした投球フォームは、キューバの野球選手を想起させた。その投手こそ、島野愛友利さんだった。

「119キロというスピードは男子の中に入ると、たいしたスピードではありません。女子特有の柔軟性を活かし、低い重心からできるだけ打者に近づいてボールをリリースする。ボールの回転数を意識しています」

 中学生になって、彼女は一度、女子野球に飛び込んだ。しかし、よりレベルの高い野球がしたいという想いが募り、男子を相手に自分のボールが通用するのか試したい気持ちも捨て切れなかった。そこでふたりの兄も所属した大淀ボーイズに入団し、チームの練習だけでなく、野球塾にも通って独自の投球フォームを構築していた。

 島野さんの5歳上の兄は名門・大阪桐蔭で甲子園出場を果たし、1歳上の兄は大阪のもうひとつの強豪・履正社に入学していて、彼女は甲子園が身近にある環境に育っていた。
 
「甲子園に立ちたいと思った事はあります。だけど、女の子だし。どうやったって甲子園に立てないことは野球を始めた頃からわかっていた気がします」

 その年の夏が終わりに近づく頃、大淀ボーイズは数ある中学硬式野球リーグの垣根を超えて日本一を決するジャイアンツカップに出場する。東京ドームで行われた決勝で、最終回のマウンドに上がったのが島野さんだった。1死満塁のピンチを切り抜け、胴上げ投手に。一躍、日本で最も有名な女子野球選手となった。

関連キーワード

関連記事

トピックス

山口組分裂抗争が終結に向けて大きく動いた。写真は「山口組新報」最新号に掲載された司忍組長
「うっすら笑みを浮かべる司忍組長」山口組分裂抗争“終結宣言”の前に…六代目山口組が機関紙「創立110周年」をお祝いで大幅リニューアル「歴代組長をカラー写真に」「金ピカ装丁」の“狙い”
NEWSポストセブン
「衆参W(ダブル)選挙」後の政局を予測(石破茂・首相/時事通信フォト)
【政界再編シミュレーション】今夏衆参ダブル選挙なら「自公参院過半数割れ、衆院は190~200議席」 石破首相は退陣で、自民は「連立相手を選ぶための総裁選」へ
週刊ポスト
Tarou「中学校行かない宣言」に関する親の思いとは(本人Xより)
《小学生ゲーム実況YouTuberの「中学校通わない宣言」》両親が明かす“子育ての方針”「配信やゲームで得られる失敗経験が重要」稼いだお金は「個人会社で運営」
NEWSポストセブン
中居正広氏と報告書に記載のあったホテルの「間取り」
中居正広氏と「タレントU」が女性アナらと4人で過ごした“38万円スイートルーム”は「男女2人きりになりやすいチョイス」
NEWSポストセブン
『月曜から夜ふかし』不適切編集の余波も(マツコ・デラックス/時事通信フォト)
『月曜から夜ふかし』不適切編集の余波、バカリズム脚本ドラマ『ホットスポット』配信&DVDへの影響はあるのか 日本テレビは「様々なご意見を頂戴しています」と回答
週刊ポスト
大谷翔平が新型バットを握る日はあるのか(Getty Images)
「MLBを破壊する」新型“魚雷バット”で最も恩恵を受けるのは中距離バッター 大谷翔平は“超長尺バット”で独自路線を貫くかどうかの分かれ道
週刊ポスト
もし石破政権が「衆参W(ダブル)選挙」に打って出たら…(時事通信フォト)
永田町で囁かれる7月の「衆参ダブル選挙」 参院選詳細シミュレーションでは自公惨敗で参院過半数割れの可能性、国民民主大躍進で与野党逆転へ
週刊ポスト
約6年ぶりに開催された宮中晩餐会に参加された愛子さま(時事通信)
《ティアラ着用せず》愛子さま、初めての宮中晩餐会を海外一部メディアが「物足りない初舞台」と指摘した理由
NEWSポストセブン
「フォートナイト」世界大会出場を目指すYouTuber・Tarou(本人Xより)
小学生ゲーム実況YouTuberの「中学校通わない宣言」に批判の声も…筑駒→東大出身の父親が考える「息子の将来設計」
NEWSポストセブン
大谷翔平(時事通信)と妊娠中の真美子さん(大谷のInstagramより)
《妊娠中の真美子さんがスイートルーム室内で観戦》大谷翔平、特別な日に「奇跡のサヨナラHR」で感情爆発 妻のために用意していた「特別契約」の内容
NEWSポストセブン
沖縄・旭琉會の挨拶を受けた司忍組長
《雨に濡れた司忍組長》極秘外交に臨む六代目山口組 沖縄・旭琉會との会談で見せていた笑顔 分裂抗争は“風雲急を告げる”事態に
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 中居トラブル被害女性がフジに悲痛告白ほか
「週刊ポスト」本日発売! 中居トラブル被害女性がフジに悲痛告白ほか
NEWSポストセブン