清原果耶主演のNHK連続テレビ小説『おかえりモネ』で、百音を厳しくも優しく支えるのが資産家で“姫”と慕われる新田サヤカ。演じるのは夏木マリ(69歳)だ。ひときわ存在感を放つ夏木だが、これまでもサヤカのように芯の強い女性を演じてきた。その変遷をコラムニストのペリー荻野さんが振り返る。
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NHKの朝ドラ『おかえりモネ』。気象予報士デビューしたヒロイン・モネこと永瀬百音(清原果耶)は、たくさんの人に支えられているが、中で最強とも思えるのが、新田サヤカ(夏木マリ)である。モネが最初に就職した米麻町森林組合のボス的存在のサヤカは資産家で、山に詳しく、モネにさまざまなことを教える。自然を愛し、感謝を忘れない彼女は、山の神様とツーカーみたいにも見える。
夏木マリは、さまざまな形で「強き女」を表現してきた。私が最初に衝撃を受けたのは、1974年のドラマ『高校教師』だ。あ、真田広之や藤木直人のドラマじゃないです。このときの先生は、加山雄三。放送は東京12チャンネル(現在のテレビ東京)である。眉毛を細くくっきりメイクした紀子(山内えみこ)はじめ、不良女子高生ばかり出てきたが、みんな現実に怒り、人情味もあった。先輩格のスケ番役で桃井かおりも出演。個人的には学園ドラマの傑作だと思っている。
このドラマの主題歌が夏木マリの『裸の青春』。私に指図はいらない、たった一度の青春を悔いのないようにと言われるが、何もせず終わるより、過ちを悔やむ人生を選ぶといった歌詞のメッセージは、今聴いても響く。
その夏木マリは、演劇活動も開始。強烈だったのは、先日亡くなった千葉真一出演の映画『里見八犬伝』だった。妖しい妖怪一党に狙われる姫(薬師丸ひろ子)を助けるために集結した八人の犬士(千葉、真田広之、志穂美悦子、京本政樹ら)の壮絶な戦いを描く伝奇物語で、夏木は百年の時を経て蘇った悪霊・玉梓を演じたのである。
ひらひらの襟がついたゴージャスなマントを引きずりながら、生首を並べた宮殿を歩き、舌なめずりをするように悪事を重ねる妖艶な玉梓。クライマックスでは、宙を舞い、姫を狙う。『南総里見八犬伝』はもともと江戸時代の滝沢馬琴作の大長編小説。玉梓は二百年余り人々を恐れさせた存在であり、この映画では千葉、真田はじめ、パワフルな俳優を向こうに回す大悪役である。