乾燥対策のためにも「換気」が重要
「病気が怖いからクーラーは使わない方がいい」と思った人もいるかもしれない。しかし、上さんが前述したように、熱中症のリスクを考えるとクーラーは使った方が安全だ。では、どうすればいいのか。
「まずは、『脱水』に気をつけること。人は体温を下げるために汗をかくため、夏はしっかり水分補給をしないと脱水状態になりやすい。特に高齢になると自分が脱水していることに気がつきにくくなる。日常生活を送っているだけで汗をかく上、クーラーの風で粘膜も乾燥しかねないので、喉が渇いていなくても水を飲むくらいの心がけで水分補給をしましょう」(上さん・以下同)
夏バテで食欲が低下しやすい夏は、体力を回復させるため、ほかの季節以上に睡眠が重要となる。そのため、寝苦しい熱帯夜には、クーラーを使うことも大切だ。
コロナ禍で新習慣となった「換気」も、乾燥対策に効果がある。
「夏は、窓を開けると暑いこともあり、つい閉め切りがちです。窓を開けることは新型コロナの感染防止に有効なだけでなく、外気を中に入れることもできるため、湿度を保つことにも有効です」
夏型過敏性肺炎を予防するため、カビ対策も欠かせない。そのためには、こまめな掃除が重要となる。宋さんがアドバイスする。
「理想は、エアコンを使う1週間ほど前にはフィルターや吸気口の周り、内部は市販のスプレーなどを使って、熱交換器などの汚れを落としておくことです。同時に、窓を開けて換気している状態でクーラーを作動し、異音がしないか、冷風がきちんと出ているかなどの動作確認をしておくといい。クーラーの内部をしっかり乾燥させて、カビの発生を防止しておくことが大切です」
自分でできる範囲の掃除で構わないが、異音がしたり、熱交換器にカビや汚れがべっとりついている場合などは無理せず業者に任せよう。
「クーラーを長時間稼働している最中にカビ臭さを感じたときは、機械内部にカビが発生しやすい環境になっている可能性がある。そんなときは、クーラーを稼働させたまま窓を開けましょう。換気できる上、外気によって室温が上がるとクーラーの動きが活発になるため、カビの発生しやすい状態が改善されることがあります」(宋さん)
以前は木造の古い住宅で多かったカビ被害だが、最近はマンションの気密性が高くなったことから、新築マンションの住民が夏型過敏性肺炎になることも珍しくないという。
“文明の利器”なしには乗り切れない暑さとなった現代の夏は、命を守るためにクーラーを使うことが絶対条件だ。
しかし、ただつけっぱなしにするのではなく、より安心して使えるような工夫や生活スタイルの改善を意識することが必要不可欠だ。
※女性セブン2021年9月2日号