これまでグループアーティストは、「絶対的エース」が歌唱、ダンスでもメンバーを引っ張り、グループ内で中心的な役割を果たすケースが多かった。そうした傾向に近年、変化が見られるという。「全員エース」というグループの活躍が目立ってきたのだ。コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんがその背景について解説する。
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『スッキリ』(日本テレビ系)で連日放送されたボーイズグループオーディション「THE FIRST」から誕生したBE:FIRSTの快進撃が話題を集めています。
プレデビュー曲の「Shining One」が週間ダウンロード数3.1万DL、週間再生数1013.6万回を記録し、8月30日付のオリコン週間デジタルシングルランキング、週間ストリーミングランキングで2冠を達成。今月13日に7人のメンバーが発表されたばかりであり、その勢いが数字に表れています。
彼らをプロデュースするSKY-HIさんは、当初からグループのコンセプトを「クリエイティブファースト、クオリティファースト、アーティシズムファースト」「意志がある。主張がある。メッセージがある。だけどお互いを尊重し合えるグループ」と語っていました。
25日の『スッキリ』でも、MC・加藤浩次さんの「すべてのメンバーがセンターになれることを最初から考えていたんですか?」という質問に、「彼らはライバル関係ではあるんだけど、ただ競い合う、蹴落とし合うのではなくて、高め合う絆を大事にしてほしいなと思っていたし、実際にそれができている方だったので。そうなるとパフォーマンスしたときに、自分が輝くときは全力でいくし、ほかの人が輝くときは全員で立てられるし、それが代わる代わる起こるので、見ている人が目も耳も楽しくなり……」と熱っぽく語りました。
さらにSKY-HIさんは、「グループの中にリーダーを作らない」ことも名言。その理由を「直接連絡が取れる(近い関係性な)ので、悩みごとがあってもすぐ投げてもらえばいい」と言っていました。つまり、「BE:FIRSTのメンバーに優先順位はなく、全員がエースでありセンターのグループ」ということ。実際にこの日のパフォーマンスでも全員がセンターで歌って踊り、他グループで見られるようなマイク電源をオフにしているメンバーはいませんでした。
かつては時代がエースを求めていた
これまでのグループアーティストは、「絶対的なエース(センター)を踏まえてメンバーを構成し、歌やダンスを作っていく」という形が一般的でした。エンタメ業界内でも、ファンの間でも、「エース(センター)が誰なのか」が売れる必須条件のように言われ、彼らを報じるメディアも「エース(センター)がいるほうがトピックスは立ち、番組や特集が組みやすい」と考えてきたのです。
しかし、このところBE:FIRSTのような「全員エース(センター)」という印象のグループが増えてきました。女性グループの中では昨年デビューしたNiziUも、個々にしっかり見せ場を作る形のパフォーマンスやメディア出演が多く、基本的にエースやセンターという概念はほとんど見られません。また、日向坂46はセンターというポジションこそあるものの「全員選抜」という形式を採用し、乃木坂46はライブで全員がセンターで歌う企画を繰り返しています。
もともとグループにおけるエースやセンターというポジションには、歌とダンスの技術、顔と身長などのルックス、人気などを踏まえて決めてきた歴史があり、昭和の時代から続いてきたもの。AKB48グループがそれをフィーチャーした企画やプロモーションを連発したことで、あらためて脚光を浴びていましたが、東日本大震災が起きた2011年以降あたりから、「少しずつ時代に合わなくなってきた」というムードが生まれていました。
多様性の尊重が叫ばれ、芸能人に対しても「競うより協力し合う姿」「ライバル関係より一体感」「ハラハラドキドキより癒し」を求める傾向が強くなり、むしろ絶対的なエースやセンターは「ゴリ押し」などと嫌われやすくなっていたのです。