それを他人は依存だと呼ぶかもしれないが、人間は遊びがないと生きられない。たとえそれが、未曾有の被害が起きつつあるときであっても、遊びたい気持ちを消すことは難しい人も少なくないようだ。ライターの森鷹久氏が、一週間で年間降水量の半分にもなる大雨が降った8月の九州で、大盛況だったパチンコ店についてレポートする。
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8月某日、もう一週間ほど続く雨の中、九州北部某市の国道沿いのとある場所に、車が次々と吸い込まれていった。その場所とは「パチンコ店」。商店街にも、近くの大型ショッピングモールにも、付近の山や海といったレジャースポットにも人影はほぼ見られなかったが、ここだけはコロナや豪雨など関係ないと言わんばかり、お祭り騒ぎの様相である。
同店の関係者は、近年の「ギャンブル」に対する市民感情の悪化に加え、コロナ禍でも営業を続ける店が相次いだことなどによる致命的なイメージ失墜の影響を危惧していたが、その顔には安堵の表情さえ伺える。
「ステイホーム、県境またぎの移動はやめましょうといわれても、夏休みで家にいてもやることはないし。雨も降っているし、お店に来るんだとお客さんが話をされていました」(九州北部のパチンコ店関係者)
この日はちょうど、北部九州に連日の大雨が降り、このパチンコ店がある県内でも浸水被害が多く出た。九州のローカルテレビ各局も独自に報道特別番組を放送するなど、緊迫した状況が続いていた。ある場所では床上浸水で家財道具が全滅、消防などの助けを借りてゴムボートで避難……と住民が大変な思いをしている一方で、被災エリアのすぐ隣の、被害がほとんど出なかった地域では、上記のようなパチンコ店に客が殺到していたのだ。
新型コロナウイウルスに対する蔓延防止等重点措置と豪雨のダブルパンチ、といった状況の中、自身もパチンコ店にいたという福岡県在住の会社員・溝口浩二さん(40代・仮名)が当時を振り返る。