中国内陸部の甘粛省永井県にあるチベット仏教の古刹・紅城寺が、県政府関係者によって強制的に閉鎖され、僧侶や尼僧にも暴力が振るわれ、立ち退きを強制されていることが明らかになった。僧侶らは寺院内に「僧侶の還俗を強制することは、国の法律で禁じられている」という横断幕を掲げて、強硬に抗議している。
この騒動の裏には地元の人々から寺院側に莫大な額の寄付が寄せられたことを知った県政府が「半分寄こせ」と強要、寺院側が拒否したことが原因との説もあり、寄付にかこつけて、寺院を閉鎖させようとしたとの見方もある。米政府系報道機関「ラヂオ・フリー・アジア(RFA)」報じた。
紅城寺は元の皇帝フビライ・ハン(1215~1294年)の勅令により建立され最盛期には3千人以上の僧侶が修行に励んだという古刹。文化大革命(1966~1976年)などで何度も弾圧を受けたが、そのつど再建されている。
このような歴史のある紅城寺だが、このところインターネット上では、紅城寺が永井県の行政機関によって強制的に閉鎖され、僧侶や尼僧が暴力的に立ち退かされる様子を撮影した動画が多数公開されている。「われわれは横暴な県政府の暴力には絶対屈服しない!」などと書かれた横断幕を掲げている映像や、尼僧たちの泣き声や助けを求める声や、数十人の僧侶たちが政府関係者に暴力を受けている場面も記録されている。
一方でネット上では紅城寺は30万元以上の寄付を受けていたため、地元政府が寺の収入を地元と平等に分け合うことを提案したという情報も出ている。
これについて、チベット仏教のダライ・ラマ法王駐台北事務所のケルサン・ギャンツェン代表はRFAに対して、単なる金銭的な問題でなく、地元当局は紅城寺の閉鎖をたくらんでいると指摘。「チベット仏教を根底から排除しようとしている。中国共産党はいわゆる民族改革の名のもとに、僧侶や尼僧を還俗するよう何度も強要しており、それが繰り返されている。これは信仰上、とても深刻な問題なのだ」などとコメントしている。