害虫の中でも、特に嫌われているのがゴキブリだろう。病原体を媒介するなどして、人や家畜に害を与える「衛生害虫」、見た目の気持ち悪さから不快感を与える「不快害虫」、食品や紙を食べて電化製品を故障させる「経済害虫」の“害虫三冠王”と呼ばれることも多い。
そんなゴキブリから、身を守るにはどうすればいいのだろうか。そのための基礎的な知識を紹介する。
ゴキブリ自身はきれい好き
「ゴキブリは、外と室内を行き来するため、食中毒菌(サルモネラ菌など)を運んでくる衛生害虫です。ただし、ゴキブリ自体は、抗菌成分を含むワックスのようなもので体をコーティングしているため、体内に菌が入らないようになっています」(アース製薬研究部生物研究課の有吉立さん・以下同)
視力が0.1以下と弱く、鼻もないので、触角を頼りに方向とにおいを感知するゴキブリ。エサのにおいがわかるよう触角はいつも手入れするなど、実はきれい好きなのだ。
人の悲鳴にはゴキブリもパニックを起こす
やつらを見つけた瞬間、思わず叫びたくなるだろうが、こらえなければいけない。
「ゴキブリに私たちの声は聞こえていませんが、彼らは空気の振動を感じとれます。人が慌てる動作や音による振動で異変を感じると、ゴキブリは逃げようと派手に動き回ります」
そうなるとこちらもより恐怖を感じるもの。対面しても慌てず、一呼吸おいてから静かに、彼らに悟られないよう、殺虫スプレーなどのご準備を。
冷蔵庫の下で子育てしています
電源プラグを抜き差しすることがなく、常に暖かい冷蔵庫近辺は潜み場所としてもゴキブリに好まれやすい。
「普段、部屋の中をうろうろしているのは、基本的にオス。メスは暗くて狭くて暖かい冷蔵庫の下などでひたすらじっとしており、卵を産んで育てています」
冷蔵庫の下はゴキブリ天国になりやすいので、毒餌剤などをしかけるなら、まずはここをお忘れなく!
夜中に風呂場とシンクの水を飲みにくる
「ゴキブリは水が大好き。水1滴がゴキブリにとってはビールジョッキ1杯分にあたるので、水が少しでもあれば1か月は生きられます」
食べ物が多いキッチンや汚れやすいトイレによく出没するのはわかるとして、風呂場でよく見かける理由は水だった!
「夜間、浴室はよく乾かして台所のシンクも水分を拭きとっておくのがベスト。飲み物も放置しておかないこと。水があるところにはゴキブリも出ると思ってください」
床にいるやつは飛びません!
家に出るゴキブリに恐怖を感じる理由の1つに「突然飛ぶ」というのがあるのではないか。実は床を這うゴキブリは飛べない。
「ゴキブリは飛行機のように床から飛び立つことができません。なので、床にいるものが突然飛んで向かってくることはないと思ってください」
逆に言えば、壁や天井など、側面にいるものは飛び降りる可能性がある。しかし、この生態を知っていれば心構えができ、必要以上に恐れることがなくなるはずだ。
殺虫剤は前(頭)からかける
「ゴキブリは後ずさりできません。お尻に向かってスプレーをかけても、前進されてしまえば殺虫剤をかぶることなく逃げられてしまいます。ですから、前にしか進めない習性を利用し、殺虫スプレーは前(頭側)にかけるようにしましょう」
この方法でスプレーをかけると、ゴキブリは一度ひっくり返るが、まだ死んでいない。逃げられる前に“追いスプレー”で確実に仕留めること。闘いは最後まで気を抜いてはいけない。
取材・文/番匠郁 イラスト/藤井昌子、サヲリブラウン