北朝鮮では7月初めに開催された最高人民会議(国会に相当)常務委員会全体会議で「薬物犯罪防止法」が可決されるなど、麻薬の取り締まりが強化されている。しかし、北朝鮮の人々は新型コロナウイルスの感染拡大や食料品の不足などの苦しい日常生活を忘れようと医療用のアヘン(モルヒネ)を摂取するなど、薬物中毒が深刻化していることが明らかになった。米政府系報道機関「ボイス・オフ・アメリカ(VOA)」などが報じた。
とくにアヘン中毒が蔓延しているのは北朝鮮北部の日本海に面する感鏡北道の主要都市、清津市や恵寧市などで、新型コロナウイルスの感染拡大以前は、中国産の覚せい剤が出回っていた。咸鏡北道は中国とロシアと国境を接しており、しかも陸路なため、密輸が容易な立地条件にあったためだ。
しかし、北朝鮮当局が感染対策で、国境を封鎖したことから、安価な覚せい剤が手に入らなくなり、いまでは価格が高騰。以前は、覚せい剤1グラムは中国元で100元(約1700円)で買えたものが、最近は10倍の1000元なったことから、市民らはアヘンにシフトしているという。
アヘンは主に中国の病院で使われている医療用のものが多く、これらのアヘンは、北朝鮮の闇市場でも売られており、1グラム20元(約340円)ほどといわれ、一般の市民でも手が届く値段だ。
韓国在住の脱北者らはVOAに対して、「住民の7割は麻薬の経験者」「自分も使った」と語っている。また、北朝鮮の市場関係者も「多くの人がアヘンを使って一時的にせよ生活上の苦労を忘れたいと思っている。覚せい剤やアヘンの使用者を法律で罰することは簡単だが、政府は市民が健康で安定した生活を送れるようなシステムを用意すべきだ」などと話している。
北朝鮮の刑法では、麻薬の製造や密売について、最高で死刑となるなど、極めて厳しい罰則を科している。しかし、この7月に最高人民会議で、さらに新たな特別法として「薬物犯罪防止法」が可決されたことについて、VOAは「北朝鮮国内で以前に増して、麻薬汚染が拡大しているとの現実があるのは確実だ」と分析している。