ライフ

増上寺・宝物展示室【4】壇蜜、日英友好「建築模型」の存在感に見入る

デザイン:古宇田實、彫刻:高村光雲『台徳院殿霊廟模型』(中門・透堀・拝殿・相之間・本殿)明治42年(1909年) Royal Collection Trust/(c) Her Majesty Queen Elizabeth II 2021

デザイン:古宇田實、彫刻:高村光雲『台徳院殿霊廟模型』(中門・透堀・拝殿・相之間・本殿)明治42年(1909年) Royal Collection Trust/(c) Her Majesty Queen Elizabeth II 2021

 日本美術応援団団長で美術史家・明治学院大学教授の山下裕二氏と、タレントの壇蜜が、日本の美術館や博物館の常設展を巡るこのシリーズ。今回は東京都・港区の増上寺・宝物展示室の第4回。2人が日英両国の友好の証である貴重な「模型」を見る。

壇蜜:増上寺の宝物展示室はお寺の中とは思えないモダンな異空間です。『台徳院殿霊廟模型』は豪華絢爛で存在感を放っていますね。

山下:日本文化を紹介する趣旨で明治43年の日英博覧会へ出品された建築模型で、明治末期の伝統工芸や建築の最高の技術が結集されています。台徳院殿霊廟は徳川2代将軍の秀忠公の墓所で、3代・家光公が寛永9年に増上寺で造営したもの。この霊廟を基に日光東照宮も造営されました。

壇蜜:装飾美を誇る日光東照宮の原点だったとは。霊廟は境内で見学できますか。

山下:明治時代に一般公開されて観光地となり戦前には国宝に指定されていましたが、昭和20年に大空襲で焼失してしまいました。

壇蜜:戦火で……。模型が残っていたのは貴重です。

山下:日英博覧会を訪問した記念に英国国王のジョージ5世へ献上された後、英国王室のロイヤル・コレクションとして保管されていたのです。日英友好400年の平成25年にエリザベスII世女王より日英文化交流の歴史的記念物として日本で展示するよう提案があり、増上寺へ長期貸与という形で里帰りしました。

壇蜜:模型は日英両国が築いた友好の証なのですね。

山下:展示前の修復・組み立て作業中に重要な部品をチャールズ皇太子が直々に届けられたことも。令和元年に天皇陛下の「即位礼正殿の儀」で来日された折には、宝物展示室を訪れて模型をご覧になりました。

【プロフィール】
山下裕二(やました・ゆうじ)/1958年生まれ。明治学院大学教授。美術史家。『日本美術全集』(全20巻、小学館刊)監修を務める、日本美術応援団団長。

壇蜜(だん・みつ)/1980年生まれ。タレント。執筆、芝居、バラエティほか幅広く活躍。近著に『三十路女は分が悪い』(中央公論新社刊)

●増上寺・宝物展示室
【開館時間】10時~16時(最終入館15時45分)※当面の間、平日は11時~15時閉館(最終入館14時45分)
【休館日】火曜(祝日の場合は開館)
【入館料】700円 ※徳川将軍家墓所拝観共通券1000円
【住所】東京都港区芝公園4-7-35

撮影/太田真三 取材・文/渡部美也

※週刊ポスト2021年9月10日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

大谷と真美子さんの「冬のホーム」が観光地化の危機
《ベイビーが誕生した大谷翔平・真美子さんの“癒しの場所”が…》ハワイの25億円リゾート別荘が早くも“観光地化”する危機
NEWSポストセブン
公然わいせつで摘発された大阪のストリップ「東洋ショー劇場」が営業再開(右・Instagramより)
《大阪万博・浄化作戦の裏で…》摘発されたストリップ「天満東洋ショー劇場」が“はいてないように見えるパンツ”で対策 地元は「ストリップは芸術。『劇場を守る会』結成」
NEWSポストセブン
なんだかんだ言って「透明感」がある女優たち
沢尻エリカ、安達祐実、鈴木保奈美、そして広末涼子…いろいろなことがあっても、なんだかんだ言って「透明感」がある女優たち
女性セブン
同僚に薬物を持ったとして元琉球放送アナウンサーの大坪彩織被告が逮捕された(時事通信フォト/HPより(現在は削除済み)
同僚アナに薬を盛った沖縄の大坪彩織元アナ(24)の“執念深い犯行” 地元メディア関係者が「“ちむひじるぅ(冷たい)”なん じゃないか」と呟いたワケ《傷害罪で起訴》
NEWSポストセブン
過去の大谷翔平のバッティングデータを分析(時事通信フォト)
《ホームランは出ているけど…》大谷翔平のバッティングデータから浮かび上がる不安要素 「打球速度の減速」は“長尺バット”の影響か
週刊ポスト
電動キックボードの違反を取り締まる警察官(時事通信フォト)
《電動キックボード普及でルール違反が横行》都内の路線バス運転手が”加害者となる恐怖”を告白「渋滞をすり抜け、”バスに当て逃げ”なんて日常的に起きている」
NEWSポストセブン
16日の早朝に処分保留で釈放された広末涼子
《逮捕に感謝の声も出る》広末涼子は看護師に“蹴り”などの暴力 いま医療現場で増えている「ペイハラ」の深刻実態「酒飲んで大暴れ」「治療費踏み倒し」も
NEWSポストセブン
初めて沖縄を訪問される愛子さま(2025年3月、神奈川・横浜市。撮影/JMPA)
【愛子さま、6月に初めての沖縄訪問】両陛下と宿泊を伴う公務での地方訪問は初 上皇ご夫妻が大事にされた“沖縄へ寄り添う姿勢”を令和に継承 
女性セブン
中村七之助の熱愛が発覚
《結婚願望ナシの中村七之助がゴールイン》ナンバーワン元芸妓との入籍を決断した背景に“実母の終活”
NEWSポストセブン
松永拓也さん、真菜さん、莉子ちゃん。家族3人が笑顔で過ごしていた日々は戻らない。
【七回忌インタビュー】池袋暴走事故遺族・松永拓也さん。「3人で住んでいた部屋を改装し一歩ずつ」事故から6年経った現在地
NEWSポストセブン
大阪・関西万博で天皇皇后両陛下を出迎えた女優の藤原紀香(2025年4月、大阪府・大阪市。撮影/JMPA)
《天皇皇后両陛下を出迎え》藤原紀香、万博での白ワイドパンツ&着物スタイルで見せた「梨園の妻」としての凜とした姿 
NEWSポストセブン
“極度の肥満”であるマイケル・タンジ死刑囚のが執行された(米フロリダ州矯正局HPより)
《肥満を理由に死刑執行停止を要求》「骨付き豚肉、ベーコン、アイス…」ついに執行されたマイケル・タンジ死刑囚の“最期の晩餐”と“今際のことば”【米国で進む執行】
NEWSポストセブン