たとえ環境に恵まれなくても、努力すれば未来は開ける。なぜ勉強するの? なぜ練習するの? と問われたとき、大人はたぶんそう答えるだろう。だが、新型コロナウイルスの感染拡大によって、大人にはそう答えられる余裕がなくなってきた。急速に悪化する家計が子供の学力に影響を及ぼし、さらに子供同士で差別感情を抱かせ始めている過酷な現実について、ライターの森鷹久氏がレポートする。
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新型コロナウイルスの子供への感染が広がるなか、新学期が始まることを思い、親たちは落ち着かない日々を過ごしている。自分の子供だけはなんとしてでも守りたい、というのが親心ならば、自分の子供だけにはどうにか勉強をさせたい、スポーツをさせたい、と思うのも、やはり親心である。そんな親心が、コロナ禍に見舞われた子供達の環境を、歪に変貌させている。東京都内の学習塾関係者が打ち明ける。
「コロナ禍で、子供たちの学力や体力に明らかな差が出てきています。当校は比較的授業料も高く、教育に熱心な親御さんが多いため、感染対策で授業がなくなっても、子供用のパソコンやタブレットを買い与え、すぐにリモート授業環境を整えられる方ばかり。コロナ禍による授業の遅れもあり詰め込んだスケジュールになっていますが、その分、塾に通えている子供達の学習スピードは早いんです」(都内の学習塾関係者)
問題は、家計に余裕がないなどの理由で、塾に行けない子供の存在だ。休校や短縮授業によって大幅な学習遅れが発生しているという学校も少なくない。そのような環境にあって、塾に行かず、学習の機会が学校だけという子供たちは、目に見えて学力が低下しているというのだ。
「そうした家庭は、親御さんが非正規社員などで収入も低く、コロナ禍であっても仕事は休めない。だから、子供の面倒を見る時間も余裕もなく、結果的に子供は置き去りにされています。そんな家庭環境では、よほど勉強が好きでない限り、子供が自発的に学習に取り込むことはほぼないと言っていいでしょう」(都内の学習塾関係者)
こうした「格差」の傾向はすでに顕在化していて、以前、筆者は取材し記事にしている。たとえば、塾に通っていた生徒でも、両親がコロナの影響で収入が減ったため塾の授業数を減らさざるを得ず、学習機会を奪われるような事態も起きていた。あの後、子供たちを取り巻く環境はますます過酷になっていた。