「医療従事者については11月以降、高齢者は来年2月以降に打ち始めることになる」。河野太郎ワクチン担当相は8月31日、新型コロナウイルスワクチンの「3回目接種」についてそう言及した。いずれ打つことになるかもしれない3回目は、本当に必要なのか。
3回目接種は必要?
欧米に追従して日本でもワクチンの3回目接種に向けた動きが加速している。
しかし現在、国内で2回の接種率は45.1%(8月31日時点)。異物混入が報告されたワクチンや、因果関係のわからない接種後の死亡ケースもあり、不安を覚える人も少なくはない。日本感染症学会ワクチン委員会委員長で鹿児島大大学院の西順一郎教授はこう語る。
「感染の流行を抑えることは難しい状況のなかで人の行動を制限することもできないとなると、流行することを前提として、感染自体を防ぐよりも感染しても重症者や死者を出さないということに重点を置いたほうがいい。それならば、すべての人が3回目接種が必要とは限りません。若い人や健常者は2回でもいいと言えます」
ナビタスクリニック理事長の久住英二医師は現時点での検討は「時期尚早」としてこう語る。
「日本の今の状況は2回目の接種率が4割で、3回接種がどれだけ有効なのかを検討できるほど接種が進んでいません。2回接種をしたところでの感染状況の広がりなどデータを吟味したうえで、3回目接種を実施するかどうかを決めるのが科学的に誠実なやり方です。前もって3回目接種の可能性を見込んだワクチン確保の動きは評価できますが、3回目接種を決定するには、あまりに判断材料が少なく、科学的根拠に基づく議論が抜け落ちていると考えます。
河野大臣は『異種混合接種(交差接種)』実施の可能性についても言及していますが、例えばファイザーを2回打った人が3回目にモデルナを打った場合など、どのコンビネーションで打つと効果的なのかといったデータもまだ存在していません」
3回目接種が実現すると、まずは医療従事者、そして高齢者という順番で進むことになる。国際医療福祉大学病院内科学予防医学センターの一石英一郎教授が指摘する。
「目下、2回目の接種をしている人の場合、3回目接種をする時期は、8か月後で来年の5月頃になります。その頃には現在のデルタ株がどうなっているのか、新たな変異株に3回目接種で対応できるのかを含め、まったく展開が読めません」