放送作家、タレント、演芸評論家で立川流の「立川藤志楼」として高座にもあがる高田文夫氏が『週刊ポスト』で連載するエッセイ「笑刊ポスト」。深作欣二監督と森田芳光監督についてオリンピックを見ながら書いた原稿と思い出についてつづる。
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私の大好きなふたりの映画監督を大リスペクトした渾身本がたて続けに出る。深作欣二と森田芳光である。
久々のやばいヤクザ映画『孤狼の血 LEVEL2』を見て興奮し、家で一気に『仁義なき戦い』を5本見ていたら「週刊ポスト」でも連載している「春日太一がああ見えてちゃんと責任編集をしますので、深作監督について軽く一本書いてみませんか、オリンピックでも見ながら」と発注が来た。いろんな人がよってたかって書くでおなじみの「KAWADEムック」の例のシリーズだ。文芸別冊として近々出そうだ。私以外はちゃんとした人が深作監督を論じ書いているのでご安心下さい。
原稿を頼まれてそうかもう10年になるのかとしみじみとしてしまったのが私の青春そのものの森田芳光だ。2011年に61歳という若さと速さでその奇才人生を駆け抜けた森田。私の日芸の1年後輩で「落研」でもしごいた。同じ渋谷生まれという事もあって下町っ子とは違う東京っ子独特のにおいを互いに感じていた。
そうだ、あれは「立川談志のお別れの会」をホテルでやっている時、取材に来ていた記者達があわてて私の所へ皆な飛んで来て耳元で口々に「森田監督が亡くなりました」。腰を抜かしながら来ていた爆笑問題にその事を伝えた。太田も森田から1本撮らせてもらっていた。若くしてその才能を森田から見抜かれ期待されていたのだ。
森田のデビュー作は落語家のようなもので青春のような。うまい先輩である私と下手な後輩森田をモデルにしたような尾藤イサオと伊藤克信の名作『の・ようなもの』。
このあと続々と名作を生み出していく。『家族ゲーム』『メイン・テーマ』『それから』『キッチン』『失楽園』『黒い家』『阿修羅のごとく』『武士の家計簿』。まだまだここに書ききれない程名作がいっぱいある。
そこで「森田芳光70祭」として奥方であり森田作品のプロデューサーである三沢和子を中心に大プロジェクトが動き出した。森田ひとりのためにこれだけの人間、スタッフが集まって一所懸命やってくれるのだから幸せな男である。
私も想い出を書いた本は『森田芳光全映画』(リトルモア)、相当濃厚な一冊。宮藤官九郎も寄稿。私も森田も太田も宮藤も春日太一も深作もみーんな「日芸」というのが凄い。
各地で上映会もあるが生まれ育った渋谷円山町のユーロスペースでは9月10日(金)19時より私、伊藤克信、三沢和子のトークがついた『の・ようなもの』。12月にはコンプリートBlu-rayBOXも出る予定。
イラスト/佐野文二郎
※週刊ポスト2021年9月17・24日号