外出自粛、テレワークの増加で住まいの役割が大きく変わりつつある。中でも居住スペースが限られるマンションでは、共用施設にワーキングスペースを確保するなど、いわば“テレワーク特化型マンション”が続々と登場している。だが、そうした住まいは本当に利便性が高く住みやすいのか──。住宅評論家の山下和之氏が各社の物件を探ってみた。
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リクルートでは、住宅を取得した人や購入を検討している人を対象とする調査の中で、コロナ禍の影響によって住まい選びの考え方がどう変わったかを質問している。
その結果は別掲の表1にある通りで、「住居費がもったいない」が25%のトップだが、次いで「収納が狭い」「間取り(部屋の配置・数)が良くない」「遮音性能が低い/騒音が気になる」「住戸が狭い(専有面積)」などが続いている。
ほかにも、「落ち着いて仕事できるスペースがない」「一人になれるスペースがない」など、住まいの狭さに起因する課題が上位に並んでいるのが大きな特徴だ。
コロナ禍でテレワークが増え、共働きだと夫婦ともに在宅時間が長くなる。また、子どもたちも感染を懸念して自主休校などが増え、家族全員が在宅する時間が長くなっている。
そのため、住まいの中での圧迫感が強まり、落ち着いて仕事ができない、一人になれないなどのストレスが溜まり、それが家族のコミュニケーションを阻害し、家庭内暴力、ひいては離婚や家族崩壊などにつながっているのではないかと言われている。
暫定利用の「ワークインクローゼット」「変身クローク」
そのため、分譲マンションや賃貸マンションではさまざまな工夫が行われるようになっている。
住戸内にテレワークスペースがとれれば一番いいのだが、専有面積が限られる中では簡単ではない。しかも、コロナ禍もいつまでも続くものではないだろうから、日々の通勤が戻ってきたときには、無駄な空間になりかねない。もちろん、富裕層向けの専有面積が100平方メートル前後に達する物件だと、もともと書斎や趣味の部屋などがとれるので、それがワークスペースになり得るが、一般的なマンションではそうはいかない。
そこでよく見られるのが、住戸内に暫定利用できるワークスペースを設置するというケースだ。
たとえば、三菱地所レジデンスの分譲マンション「ザ・パークハウス」シリーズでは広めの収納を、「ウォークインクローゼット」ならぬ、「ワークインクローゼット」と呼び、必要に応じてワークスペースにできるようにしている。
同様に、ポラスグループの「ルピアコート津田沼」(千葉県船橋市)では、「変身クローク」と名付けた、折り畳み式のテーブルを備えたクロークを設置している。テーブルを広げて椅子を持ち込めば、テレワークスペースとして利用でき、テーブルを畳めば広めのクローゼットに戻せる仕組み。実用新案を取得しているそうだ。