北朝鮮の経済状況が悪化するなか、今年8月には、一部の市民が誘拐犯罪に手を染めており、身代金目当てで少なくとも2件の誘拐事件が発生していたことが分かった。この2件の誘拐グループは警察に逮捕され、誘拐された子供たちは無事保護されたという。これらの事件の背景には北朝鮮国内の新型コロナウイルスの感染拡大で、慢性的な食糧不足が深刻化していることもあるようだ。
北朝鮮の情報筋が米政府系報道機関「ラヂオ・フリー・アジア(RFA)」に明らかにしたところでは、首都平壌の北に位置する平安南道では8月中旬、6歳の女の子が家の前の川で遊んでいて行方不明になったが、その後、誘拐犯から家族に連絡があり、50万ウォン(約8300円)を要求されたという。
犯人は少女の家から遠く離れた村に住む30代の男で、少女の家庭が裕福であることを知ったうえで、犯行に及んだ。犯人は少女から両親の携帯電話の番号を知り、少女を自宅の物置に閉じ込め、両親に電話したという。
しかし、警察は身代金引き渡しの現場で、犯人を逮捕した。
もう1件の誘拐事件は少女の誘拐とほぼ同じ時期に起こっている。10歳の少年が平安南道の自宅近くの山道を歩いていると、バイクに乗った40代の男が少年に「家まで送ってやるよ」と誘われ、そのまま男の自宅に連れていかれ軟禁されたが、少年は自力で脱出し家に帰った。その後、警察官に事情を話し、犯人は警官によって自宅に踏み込まれて、逮捕されたという。
同筋は「この誘拐犯は警察の取り調べに、友人のバイクを借りて、身代金目当ての人質を取る外国映画のシーンを真似たと供述した。男は食べるものがなくて空腹に苦しんでいたようだ」と語っている。
RFAは北朝鮮国内に親戚を持つ中国の住民の話として、北朝鮮では新型コロナウイルスの感染拡大で、商売ができなくなり、知人などからお金を借りてやっと糊口をしのいでおり、困難な状況が続いていると伝えている。