藤井聡太二冠(19)の快進撃が止まらない。王位のタイトルを防衛し、現在は豊島将之二冠(31)と叡王戦五番勝負で挑戦者として対戦中で、9月13日に勝てば史上最年少三冠となる。
その大活躍に各界の注目が集まり、今年3月からはサントリーの緑茶『伊右衛門』のテレビCMに起用されている。将棋ライターの松本博文氏は話す。
「棋士に個人スポンサーがつくこと自体、非常に珍しい。全国CMに出演するのは羽生善治九段(50)など、数えるほどです」
初手を指す前にお茶を一口飲む“初手お茶”のルーティンで知られる藤井二冠だけに抜擢もうなずけるが、先の王位戦で藤井二冠の傍らにあったのは『伊右衛門』ではなく、サントリーのライバルである伊藤園の『お~いお茶』だった。
前出・松本氏が続ける。
「藤井二冠は普段の対局では『伊右衛門』を持ち込むことが多いように見受けます。個人スポンサーなので、そこは積極的にやっているのでしょう。しかし王位戦は伊藤園が特別協賛のため、どの対局者にも『お~いお茶』が無償で用意されています」
自社CMに出演する棋士が、ガチンコで競合するライバル社の商品とともに大映しになる──そんな状況をどう見たのか。契約を結ぶサントリー食品インターナショナル広報部に尋ねた。
「棋戦の時に飲んでいただくものは、すべてご本人にお任せしています。あくまでも藤井二冠が最も集中していただけるものを飲んでいただければという立場です。もちろん『伊右衛門』を飲んでいただければうれしいですが、集中していただくことが一番だと考えています」
“初手お茶”の銘柄選びでも指し手を迷う必要はなさそうだ。
※週刊ポスト2021年9月17・24日号