全国の65歳以上の新型コロナワクチン接種率(2回目)が8割を超えるなか、多くの人が接種後の痛みや発熱を訴えている。
そのなかで処方薬はもちろん、市販薬の売り上げが急増しているのが解熱鎮痛剤だ。厚労省が「必要な場合は解熱鎮痛剤を服用するなどして、様子を見ていただく」と推奨したこともあり、8月第1週の市販解熱鎮痛剤の販売額は、前年同期比66%増となる18億8400万円を記録した。
しかし銀座薬局代表で薬剤師の長澤育弘氏は「解熱鎮痛剤は組み合わせに注意が必要だ」と語る。
「医療用医薬品の添付文書には併用に注意すべき薬の具体名があり、医師や薬剤師が注意喚起をします。しかし同じ成分の市販薬の添付文書には『他の解熱鎮痛剤、かぜ薬、乗り物酔いの薬を服用している人は本剤を飲まないでください』と書かれているだけで、そもそも添付文書を読まない人が多い」
実際にどのような組み合わせが危険なのか。まず解熱鎮痛剤は「非ステロイド性抗炎症薬」と「アセトアミノフェン」とに大別され、危険な組み合わせの薬も異なる。
非ステロイド性抗炎症薬の併用でまず注意すべきは高血圧の患者だ。
「降圧剤のACE阻害薬と併用すると、血管を広げる作用があるプロスタグランジンが抑制され、降圧作用が弱まる恐れがあります。実際に私の患者さんのなかでも血圧がなかなか下がらない人に話を聞くと腰痛や肩こりで処方されて服用していたケースがありした」(長澤氏)
高血圧でチアジド系利尿薬を飲んでいる患者も非ステロイド性抗炎症薬の併用で降圧作用が減る恐れがある。
糖尿病治療薬のSU薬との併用も要注意だ。国際医療福祉大学病院内科学予防医学センター教授の一石英一郎医師が指摘する。
「糖尿病の薬のなかでもSU薬は効果が強い薬ですが、非ステロイド性抗炎症薬と併用するとSU薬の血中濃度が高くなり、血糖値が下がり過ぎて低血糖になる可能性があります」
向精神薬や抗リウマチ薬も非ステロイド性抗炎症薬との併用で作用が増強する恐れがあるので気をつけたい。