8月から10月は台風シーズンと呼ばれるが、特に9月は日本列島を縦断するような多くの台風が襲来する。近年は地球温暖化に伴う気候変動の影響もあり、台風の勢力が増して水害の規模も増大する傾向にある。年々高まる水害のリスクについて、ニッセイ基礎研究所主席研究員の篠原拓也氏が考察する。
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ここ数年、毎年のように台風や線状降水帯の影響で大雨やゲリラ豪雨が起こり、各地で河川の氾濫や土砂災害が発生している。その結果、尊い人命が失われたり、多数の負傷者が出たり、多くの住民が避難を強いられたりする。また、住宅をはじめとした建物や、農耕地、道路、橋梁、堤防など、社会生活のインフラ面でも大きな損害が発生している。
台風の発生、上陸は例年8~9月がピークとされる。今回は水害の増加についてみていこう。
「スーパー台風」による大規模水害の恐れ
水害のうち報道などでよく目にするのが、洪水など大規模水害の発生だ。洪水の被害を受けた地域で、住宅地一帯が水没してしまい、建物に取り残された人がボート等で救出される映像がテレビのニュースで報じられることも珍しくない。
洪水などの大規模水害は、発生原因の違いによって大きく4つのタイプに分けられるという。
・大雨で河川の水位が上がって、堤防が決壊して洪水が発生する「外水氾濫」
・東京東部のゼロメートル地帯などで、大量の雨水が処理できなくなって洪水が発生する「内水氾濫」
・台風や熱帯低気圧の影響で海面の水位が高くなり、それが沿岸地域を襲う「高潮」
・地震で堤防が破壊されて発生する「地震洪水」
このうち、地震洪水以外は気候変動に関連した水害であり、近年、発生頻度が増している。一般に地震の予知は困難だが、台風や熱帯低気圧の接近は数日前から予想されることが多い。だが、それでも“スーパー台風”などによって、過去に経験したことのない大規模な水害が発生する恐れが高まっているという。