温暖化に伴い、日本列島での雨が増加。豪雨による災害が平穏な生活を脅かすケースが増えている。これまでは台風だけを気にしていれば良かったが、ゲリラ豪雨、線状降水帯による広域での長雨、それに伴う土砂災害……全国で毎年のように水害が発生している。
水場から離れていても、都心の高層マンションであったとしても、いまや日本において「絶対安全」な地域はない。しかしその中でも水害が起きるたびに大きな被害が出る土地と、最小限で留まる土地がある。両者の違いはどこにあるのか。住宅評論家の櫻井幸雄さんが指摘する。
「大雨による水害を防ぐには、遊水池や地下放水路、スーパー堤防の建設が必要です。しかし現実には、東京や大阪など人口が多い都市は税収などの予算が潤沢で水害対策に力を入れる一方、予算の少ない地方の山間部や農村部は水害対策を講じられず、その結果としてたびたび水害に見舞われている面があります。
そのうえ、地方で水害によるインフラ被害などが生じた場合、修復に必要な人手も資金も足りず、地域住民が不自由な生活を長期間強いられるケースが少なくありません。結果として『もうここには住めない』と土地を離れる人が出現し、過疎化がますます進行することがあります」
つまり、住んでいる地域が水害対策に力を入れているかどうか、そしてもしそうでなかった場合、引っ越しができる金銭的余裕や身軽さがあるかどうかなど、大きな格差が生じているのだ。櫻井さんによれば、この格差はテレワークの拡充と夏冬の寒暖差でさらに広がることが予測されるという。
「夏の暑さが厳しくなるに伴って、日当たりがいいタワーマンションでは南向き住戸の人気が落ちています。加えて、テレワークでどこでも仕事ができて、金銭的に余裕がある人の中には、夏は北海道や軽井沢など涼しい場所に住み、冬は暖かい場所に移動するような“二拠点生活”を始めるパターンも少なくありません」(櫻井さん)