全国唯一の“男女別定員制”で廃止論が高まっている東京の都立高校(全日制普通科)。入試合格ラインに男女差が生じている問題や、そもそもなぜ性別で分けて募集しなければならないのかといったジェンダー視点からの批判も多い中、東京だけ男女別定員を続けている理由とは何か。そして、今後はどう制度改正すれば平等なのか。高校受験に詳しい安田教育研究所の安田理氏がレポートする。
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「都立高校の男女別定員」が新聞やテレビ等で盛んに取り上げられているが、このテーマは以前から何度も議論されてきた。
筆者もこのことについては取材を受けており、先日もあるテレビ局から電話取材を受けた。その時は、“女子が不利な状況”という視点から話が始まったのであるが、なかなか話が噛み合わず(どのレベルから話す必要があるのか苦労した)、何度も長い電話になった。
女子が不利な状況?
女子が不利といっても高校受験全体ではそうとも言い切れず、そもそも私立高校を含めて高学力の女子の行き場が少なくなっている(レベルの高い中高一貫校の多くが高校募集を閉じている)背景も話す必要があった。
その一方で、高校募集を停止した(する)学校以上に高校募集を再開した学校も多くあること、中学募集を止めて高校募集だけになっている学校もあること、共学化した学校がかなりあるため単純に女子校の募集定員だけを見れば数字が少なくなっている──といった現状もある。
こうしたことを総合的に見ると、女子校が厳しくなっているとは言えても、女子の受験生にとって不利な状況になっているとは言えない、とテレビ局には話した。
取材を受けながら感じていたことであるが、このテーマ「都立高校の男女別定員」はどのマスコミでも主として「ジェンダー秩序」の面から取り上げられており、2018年に私立医大の入試で女子が不利に扱われたことの延長線上で議論されている。
だが、筆者のように長年受験事情に触れてきた立場からすると、「ジェンダー秩序」の問題以前というか、別の要素も複雑に絡んでいるので、とてもその視点だけでは論じられなかった。