「医療逼迫」が叫ばれて久しいが、その裏でコロナ患者を受け入れていない病院が数多くある。日本テレビの報道によれば、8月31日時点で都内の確保病床(コロナ患者をすぐに受け入れ可能な「即応病床」)は5967床あったが、受け入れられた患者は4297人で、病床使用率は72%。個別に見ると、病床使用率40%以下の病院が27施設、0%の病院が7施設もあったという。
使用率100%の病院が50施設あるなか、“受け入れ格差”が浮き彫りになった形だ。
「中等症向けの臨時医療施設を、ぜひとも作っていただきたい」。8月31日、臨時会見に臨んだ東京都医師会の尾崎治夫会長は、悲痛な表情でこう訴えた。同23日には、小池百合子都知事が「通常医療の制限も視野に入れ、すべての病院、診療所に新型コロナ患者の受け入れをお願いしたい」と要請していた。
コロナ患者用の確保病床をそもそも用意していない病院は多い。都内には確保病床を持たない病院が約250あり、正当な理由なく受け入れを拒否する医療機関は、都や厚労省が名前を公表する意向を示している。
「もちろん、病院の規模的に院内感染予防を徹底できないところもあるでしょう。街中の小さなクリニックにも確保病床を用意しろというのは酷な話です。しかし、先陣を切って患者を受け入れるべき病院がそれをしていないんです」(都内病院に勤務するある医師)
臨時医療施設の設立を訴えた東京都医師会会長・尾崎氏が院長を務める「おざき内科循環器科クリニック」がそのひとつだ。
「ワクチン接種の提供や発熱外来はやってますが、陽性者の受け入れはしていません」(同前)
都医師会に聞くと、こう回答した。
「ワクチンの接種から、熱が出た患者の診察や検査はもちろん、肺炎症状があれば尾崎先生自身が救急搬送の手配をしている。検査結果が陽性となれば、ちゃんと保健所にも届出をしています。限られたスタッフ、設備のなか出来ることはすべてやっています」(広報課)
ちなみに厚労省はワクチン接種の実施病院にも補助金を出しており、一本あたり2070円の診療報酬に加え、1日50本以上打つと10万円の協力金が支給される。
医療ガバナンス研究所理事長の上昌広医師が指摘する。
「そうしたコロナ関連の様々な補助金で非常勤の医師や看護師を本気で集めれば、対応できるはずです。医療界のトップが患者を受け入れる姿勢を見せなければ、民間病院が積極的に受け入れるはずがありません。冬にかけてまた感染拡大の波が来るかもしれない。補助金の制度も含めて、いま一度仕組みを見直す時期に来ていると思います」
※週刊ポスト2021年10月1日号