週刊誌での懺悔告白が話題を呼ぶ小山田圭吾氏の辞任問題をはじめ、数々の批判を浴びた東京オリンピック開会式と対照的に、いまだに賛辞の声が止まないのがパラリンピックの閉会式である。東京の高層ビルなどを模した巨大オブジェで東京の街並みを「ダイバーシティ」として表現した演出が「モダンでデジタルな仕掛けを超え、『すべての違いが輝く街』というテーマをより幅広い観点で捉えていた」(英ガーディアン紙)と世界で絶賛された。
その後、ショーディレクターを務めたのが俳優でイベントプロデューサーの小橋賢児氏だったことが発表され話題を呼んだが、舞台美術デザイナーがタランティーノ監督作『キル・ビル』などに携わった種田陽平氏だったことも、一部で注目を集めた。
この2人には25年前に接点があり、「それがこの閉会式の原点だったのではないか」と囁かれている。1996年に公開された岩井俊二監督の映画『スワロウテイル』である。映画関係者は言う。
「架空の歴史をたどった日本にある街『円都』(イェン・タウン)を舞台に移民たちを描いたこの作品は、まさに今回の閉会式で表現されたダイバーシティを先取った世界観でした。CHARAさんや三上博史さん、江口洋介さんら豪華キャストが集った本作で、若手俳優だった小橋さんは不良少年グループのリーダー役に抜擢され、一躍脚光を浴びました」
当時30代だった種田氏も本作でダークな円都の世界観を見事に表現し、日本アカデミー賞・優秀美術賞を受賞。
「2人にとって本作は創作の原点であり、架空の東京をダイバーシティのコンセプトで描き出す閉会式のテーマは、『スワロウテイル』を意識しながら、それをカラフルに明るく発展させたものだったのではないでしょうか」(同前)