コロナ禍でまだまだマスクは必需品だが、マスクを原因とする健康トラブルが問題視されている。みらいクリニック院長の今井一彰さんは、こう話す。
「マスク着用時間の長期化により、心身に健康トラブルを抱える人が増えています。“マスクシンドローム”と総称されるその弊害は多岐にわたり、大きな問題となっています」
また、マスクをすると口呼吸が増え、その結果、唾液が蒸発し、虫歯や歯周病になりやすくなるのだという。
マスクがもたらす不都合は、口の中だけにとどまらない。美容皮膚科医の津田攝子さんは、いまは「肌にとっても緊急事態」だと語る。
「特にニキビや肌荒れに悩む人が急増しています。原因となるアクネ菌は、肌の毛穴にある脂をエサにして増殖しますが、マスクをつけることで顔全体の温度が上がるため、皮脂腺の働きが活発になり、ニキビができやすい肌環境がつくられてしまう。つまり、おでこなどマスクに覆われていない部分のニキビであっても、マスクが原因である可能性が大いにあるのです」(津田さん)
温度が上昇した皮膚に、マスクの摩擦刺激が加われば、さらなる負担が肌を襲う。
「湿度が高く、ふやけた肌は角質層が壊れてバリア機能が低下した状態です。そのため、本来ならば刺激を感じないはずの汗がしみたり、ピリピリとした痛みを感じたりする原因になってしまう。こうした弱った状態の肌にマスクの摩擦が合わされば、かゆみやかぶれ、赤みが出やすくなってしまうのは当然です」(津田さん)
肌への弊害は、肌の下にも及ぶ。
「マスクで口元が隠れてしまうため、表情筋を使わなくなったという人が増えており、しわやたるみが増えることが危惧されています。2~60代の男女400人を対象に行った『ロッテ』の調査でも、4割近くの人が“マスク生活によって表情を気にしなくなった”という回答がありました」(今井さん)
マスクに覆われた口回りの筋肉の衰えは、着実に「老い」を進行させる。
「顔と頭の筋肉や血管はつながっているため、顔の筋肉が動かなくなれば頭皮の血流に影響が出て、抜け毛などの原因になる可能性も」(津田さん)
マスクで顔の下半分が隠れた状態は大人でもコミュニケーションが取りづらいが、よりその影響を大きく受けるのは子供たちだ。「先生の口が怖い」「お友達のマスクを取ったお顔が変だ」と幼稚園や保育園の園児たちから不安交じりの声を聞くことがあると精神科医の関谷秀子さんは話す。
「特に幼い子供たちほど、口元が見えない状態で相手の表情を推測し、気持ちを読み取るのが苦手です。相手の口元が見えないから、相手が怒っているのか笑っているのか推測できず、コミュニケーションがうまく取れない。加えてコロナ禍では、家庭内でもマスクをつけて過ごす親子も珍しくなく、なかには保育士がマスクを外すと“口が怖い”と泣く園児もいるそうです。
小学校においても、マスク越しのコミュニケーションに苦手意識を持ってしまい、友達とうまくつきあえずに、家で親とべったりという子供も。親離れすべき時期にできないというケースも耳にします。現在はまだはっきりとした形では表れていませんが、数年先、マスク生活が原因で相手の気持ちをうまく読み取れない子供が多く出てきてしまうことを懸念しています」
※女性セブン2021年9月30日・10月7日号